リング禍 雑感 |
見て見ぬ振りをすることで自分で自分をごまかして
いいかげんに折り合いをつけてきた多くのことがある
基本的な人権が守られ人命尊重が社会の原則になっている現代
このような競技が現に存在し存続しているということ自体
よくよく考えてみると非常に奇妙なことではないか
どんなスポーツにも危険はつきもの
事故を完全に避けることはできないという
それはたしかだ
野球でもサッカーでもアメリカンフットボールでも
多くの事故が起こっている
しかしボクシングの場合は意味がまったく異なる
「危険の高いスポーツ活動はたくさんあるがボクシングが他のスポーツと
異なるのはその目的が相手の意識を失わせることにあるという点である」
「意図的に脳と眼球に損傷を与え合うことを目的にしたスポーツを正当化
することはできない」
「損傷の影響は潜在的に蓄積されていくので闘えば闘うほど損傷をこうむ
る可能性が高くなる」
ボクシングの完全廃止を提唱している英国医師会の見解だ
相手を攻撃し相手から応戦する能力を奪い究極的には10秒間立つことさえ
できないほどのダメージを脳に与え合う
これがボクシングというスポーツの目的
ボクシングの事故はこの「目的」と分かちがたく結びついているという点で他の
スポーツにおける事故とは質が違う
だから正当化することはできないというわけだ
非常に始末の悪いことに
私はこの見解に理論的に反駁することができない
ではボクシングを廃止するべきと考えているのかといわれるとそうではない
ボクシングが廃止されてしまったら何より私が困る
なぜならボクシングを観戦するという行為は私の生きがいだからだ
生きがいを奪われたくはない
それはただのエゴイズムではないかといわれれば
それはそうだ、エゴイズムのどこが悪いのか!と居直るしかない
感動は心の栄養剤だ
疲れを癒し生きる活力を与えてくれる
今までボクシングを観戦し続けることで感動し勇気をあたえらる素晴らしい
経験をしてきた
しかし率直に言って、なぜ「ボクシング観戦」でなければならないのか疑問に
思うこともある
人間たるもの、「ボクシング観戦」などというものではなく
読書を通じて古今東西の英雄、賢人、哲人と交流したり
あるいは実人生における友情や恋愛を通して
感動し生きる勇気を得るべきではあるまいか
他人の痛みがわからない人が増えてきたとよくいわれる
でもよくよく考えると
他人の痛みを完全に理解することなどできるはずがない
それを求めるのはただの甘えだ
しかし、他人の痛みを他人の立場に立って想像することは人間
として必要だと思う
ボクシングを観戦していると
私にはこの種の想像力が決定的に欠けていると痛感させられる
鋭いパンチが入りボクサーがキャンバスに倒れこむ
立って来れない
ノックアウト
その瞬間 なんともいえない興奮と感動が湧き上がる
倒れこんだボクサーの痛みなんてこれっぽっちも頭にない
そういう想像力にあふれた人はボクシングを正視することなどできない
だろう
知り合いの女性でビデオで見るのもいやという人がいる
痛そうで見てられないという
三児の母だ
後楽園ホールに集まっている人にこういう想像力をもった人は少ない
現に周りを見ても
KOの瞬間は
手を叩いたり腕を振りかざし声をあげて笑ったり
そういうひとたちばかり
誰一人KOされたボクサーの痛みを想像している人などいない
事故があるたびに
JBCやジム関係者の対応を批判する声が上がる
気持ちはわかるが暴論を承知でこうも思う
体にやさしい安全なプロボクシングなんてそもそも欺瞞だ
さらに暴論
「ボクシング廃止論」の立場から批判をするのはよくわかるし正当だ
しかし、憎くもない相手の脳にダメージを与え合う
そういうスポーツを喜んで観ているものにあれこれいう資格があるのか?
少なくとも私はこの期に及んでモラルを振りかざしJBCやら何やらを糾弾する
気にはとてもなれない
ただただ選手の回復を祈るばかり・・・・
祈るばかりだ!
もちろん何もするなといっているわけではない
ストップもより厳格にするべきだろう
レフェリー以外の誰かに試合を中断させる権限を認めるべきかもしれない
大胆にラウンドの短縮も考えるべきかもしれない
「セカンドオピニオン」という発想も取り入れてドクターの数を増やしたり
あるいはドクターの権限をより強めることも重要だろう
しかし、そういう対策を打ってこの種の事故は完全に防げたとしても
試合のたびに蓄積される脳や眼球の障害(ダメージ)はどうするのかという難問が
まだ残る
外からは見えにくく当事者以外はわかりにくい蓄積された障害のことだ
これはほうっておいてもいいのか
わかりにくいし目立たない
マスコミも世間も騒がない
そういう理由で
ほうっておいていいのか
考え出すと切りがない
答えが出ない
気が狂いかねない
だから精神の健康を保つためにも
いいかげんなところで思考を停止して
「知らぬ顔の半兵衛」を決め込むしかないのだ
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