10/21 WBAライト級王者 ポーラスモセス選手の思い出 |
2009年1月3日 小堀佑介を3-0の判定に下し世界ベルトをナミビアに持ち去った
プロボクサーだ
このタイトルマッチについて
私は実質的なプロモーターとしてモセス選手陣営一行と接し続けた
日々のトレーニングの内容
また生活態度について
感心させられたポイントがいくつかあった
モセス選手の「強さ」の秘密はどこにあるのか
少しでも日本のボクシング関係者の参考になれば幸いと思う次第
「ポーラスモセスはよく食べた」
まず第一に強く印象に残ったこと
それは
「よく食べた」 だ
2008年5月 当時のWBAライト級チャンピオン、ホセ・アルファロ選手陣営一行も
私がもてなした
焼肉店
レストラン
ただアルファロ選手は全ての食事に参加しなかった
当然だろう
私が逆の立場だったら
選手はおろかトレーナーもマネージャーも含めて
一切の饗応は拒否していただろう
知らず知らずのうちに情報が漏れる恐れもあるし
料理人が狂信的なファンであった場合
何が料理に混ぜられるのかわかったものではない
心配しすぎと言われそうだが
用心に越したことはないのだ
現に
2008年10月に榎選手(角海老ジム)と戦ったWBAフェザー級王者クリスジョン選手陣営は
一切の接待を拒絶した
またプロモーターである角海老宝石ジムが用意したホテルに宿泊することさえも拒否した
宿泊滞在はインドネシア大使館内という徹底した警戒ぶりだった
ところがポーラスモセス選手は
まったくの無警戒
マネージャーやトレーナーたちと一緒にテーブルにつく
しかも出された料理は一切、拒まない
一行がナミビアから日本に着いたのは2008年12月23日午後8時半ごろ
当方が用意したバンに乗って大塚のホテルへ
「おなかが減っているでしょう。何かご馳走しますよ」
その後、午後11時には私も含め大塚の「ロイヤルホスト」でお食事
てっきりモセス選手は長旅の疲れもあって食事には欠席と思っていたら
しっかり一行にくっついてきている
しかもまあ
試合前なのにウエートは大丈夫なのか、と小堀陣営プロモーターとして
「うれしくなってしまうくらいに」
もとい!
「心配になってしまうくらいに」
よく食べるのだ
ステーキ、ライス、サラダ、スープ、チョコレートパフェ
優に3000カロリー以上はあったと思うのだがこれをペロリ
その後も食事に誘って断られたためしがない
あとから聞いてわかったのだが
モセス選手
実は普段から徹底的に体重を管理していて
減量の必要がほとんどないという
「よく食べてよく練習する」
これを徹底しているそうだ
平素から体重の管理に気を配り
無理な減量はせずに「よく食べてよく練習する」ことで体重をキープする
これが「モセス流」だ
ちなみに日本では亀田三兄弟が「モセス流」
「腹いっぱい食って一生懸命練習しないと強くなれん!」
これが史郎さんのモットーだ
三兄弟の体重も普段から一定の範囲に保たれている
「ポーラス・モセスは毎日練習した」
モセス選手に感心したことの第二は
とにかくよく練習していたということだ
日曜日さえ一切休まない
朝5時に起きてロードワーク
そして午後4時頃から約2時間、ジムワーク
これは試合直前までペースを乱すことなく続けられた
日本のボクサーは日曜は練習を休むケースが多い
しかしモセス選手は日曜も平日と同様に練習していた
日本の場合、日曜はジム自体がお休みというケースも多いので
ジムワークは難しい場合もある
しかしジムワークはともかくロードワークは一人でもできる
ロードワークはたとえ日曜日でも休むべきではないのではあるまいか
練習熱心なモセス選手を見て
そう考えさせられた次第
「ポーラス・モセスはディフェンスを重視した」
次にモセス選手のジムワークのメニューについて
とにかく「防御」に気を配っていた
ミット打ちやバッグは日本のジムのやり方と同じ
違っていたのは防御の練習だ
マススパーリングにおいて
あらかじめ一方は攻め込むだけ、と決めておいて
防御にのみ3分間集中する
そういった練習を行っていた
クリーンヒットは許さない
そのことだけに集中したスパーリングだ
もちろんこの練習には弊害も考えられる
「攻めるときは攻めるが守るときは守りに徹してしまう」
「攻防一体」ではなく「攻防分離」タイプのボクシングになってしまう懸念があるのだ
ただし考えてみれば
アフリカおよびヨーロッパ大陸圏のボクサーは防御重視の「攻防分離」タイプが多い
メキシコ、あるいは韓国、日本によく見られる
防御軽視、攻撃重視の「ファイター」タイプは少ない
佐藤幸治選手(帝拳ジム)を下したフェリックスシュトルムも
佐々木基樹選手(帝拳ジム)を下したセンチェンコも
守るときはガードをしっかり固めて守りに徹し
攻めるときは攻める
「攻防分離」タイプのボクサーである
ポーラスモセスもこのタイプ
「防御」を重視し「防御」を鍛えるトレーニングを徹底する
また、モセス選手は
リングの対角線を糸で結び
糸を中央に左右に頭を振るやり方で
ウイービング、ダッキングの練習もしっかりとこなしていた
私は、日本人ボクサーは頭や首が固いという印象を持っている
頭を振らないタイプのボクサーが多いと感じる
ウイービングやヘッドスリップは苦手
そういうタイプが多いと思う
いずれにしても
モセス選手陣営一向は
私の払いで・・・
さんざん食べて
さんざん遊んで
夜のお供に、と気を利かせて貸したDVD数十枚と4個のDVDデッキも返さずに
はるかナミビアに帰ってしまった
せめてベルトくらいは置いていくのが「一宿一飯の仁義」というものではあるまいか
この世は人情紙風船
ふんだりけったり、とは正にこのことである
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