「ズラボクサー小口効果?会場熱MAXのダイナマイトパンチ」 |
2006年4月24日後楽園ホール 第52回「ダイナマイトパンチ」
「ズラボクサー」小口効果か、この日は第一試合から、空席の数が顕著に少なく会場はほぼ満員の入り。
熱気あふれる雰囲気の中、全8試合が行われた。
第1試合 フライ級4回戦 ○遠藤嘉昭(3回TKO)桑本幹也●
宮田ジムの遠藤(1戦1分31歳)が新日本タニカワジムの桑本(2戦2敗23歳)を3回37秒、TKOで下し、初勝利。
左右のフックでプレスをかける遠藤に、桑本は防戦一方。見てしまって、手が出ない。3回、遠藤のカウンターの右ストレートが桑本のアゴを打ち抜き、ダウン。レフェリーが即座に、試合を止めた。
第2試合 スーパーフライ級4回戦 ○船井龍一(1回2分44秒KO)大槻拓也●
ワタナベジムの船井(1戦1勝20歳)が、館山牛若丸原田ジムの大槻(1戦1勝1KO)
に、1回KO勝ち。
開始30秒、リーチに勝る船井の右ストレートが、大槻にクリーンヒット。
右ストレートから、左のボディアッパー、というコンビネーションを主体に攻め続け、2分30秒過ぎ、左ボディで、大槻はキャンバスに沈む。
船井は要注目選手。パンチが単発でなくコンビネーションで出る点もよいが、もっとも魅力を感じるのは、20歳という若さと、ボクサー向きの体格。
身長、リーチで、見ると、スーパーバンタムかフェザー級の体格。
ところが、階級はスーパーフライ。体格はあるのに、体重は軽い、ということ。
「手足が長く、足が細く、骨が太くない」天性のボクサー向きの体格をしているものと思われる。
第3試合 ライトフライ級6回戦 ○小泉譲(2-1判定)石出匠●
ファイティング原田ジムの小泉(6勝2KO4敗26歳)が、キクチジムの石出(7勝1KO3敗2分25歳)に3-0の判定勝ち。
リーチに勝る小泉は、左ジャブを切らさず、中に入りたいサウスポー石出をけん制。
手打ち気味ではあっても、手数を出し続ける小泉。
頭から、中に入ろうとする石出に、3回、バッティングによる減点が告げられる。
小泉陣営のセコンドからは、「入ってきたら、アッパー返せ」の指示が再三。
狙いの右アッパーは3回2分30秒過ぎ、クリーンヒット。
ペースを握られ、ふところに入れない石出は5回、意を決したか、さらにプレスを強め、左ストレートからの返しの右フックを中心に小泉をとらえようとするが、小泉は、小さなパンチを集中し、石出の前進に応戦。足も使って、石出の攻撃をさばいて、逃げ切った。
私の採点は59-55 5回、6回以外は小泉のラウンド。
ところがジャッジの採点は、58-57で、一人は石出。
あとの二人は58-57、59-57で小泉。2-1で小泉が勝ったが、意外な小差。
石出のバッティングによる減点がなければドローだったことになる。
小泉は石出の前進をとめようと、たとえ、手打ち気味であっても、小さなパンチを、振るい続けていたのだが、このパンチの有効性を評価しなかったからだと考えられる。
たしかに、腰が入った威力のありそうなパンチとはいえなかったが・・・・
第4試合 71.5キロ契約8回戦 ○荒井操(3-0判定)高橋隆介●
2005年ウエルター級新人王、MVP草加有沢ジムの荒井操(8戦6勝6KO2敗29歳)が、MTジムの高橋隆介(6勝3KO2敗28歳)を、3-0の判定で下し、昨年8月1日以降、約9ヶ月ぶりの復帰戦を、キャリア初めての「判定勝利」で飾った。
荒井は、インパクトの強さなら、日本一。
入場するや、リングの中央で、咆哮
試合直前も、レフェリーをはさみ、対戦相手をにらみつけ、ゴングが鳴るや、一気に突進、狂ったように、左右のフックを振り回す。
まさに、「狂拳」ファイト
2003年11月6日デビューの荒井の戦績は8戦6勝6KO2敗。
勝った6試合は全てKO。うち4試合が1回KOというハードパンチャー。
東日本新人王を獲得した今井桃太郎(三迫ジム)戦、全日本新人王を獲得した柏木亮一(三松スポーツジム)戦のみが2回KOとなっている。
プロで最大のラウンド数をこなしたのは2004年2月2日の柴田明雄(ワタナベジム)戦で、4ラウンド。判定負け。
荒井の課題は大きく分けて二つあると思う。
第一はスタミナの強化。
1回から突進し、全力でパンチを振るいつづけるというのが荒井のファイトスタイル。
よほどの強靭なスタミナがないと、攻め疲れを起こしやすいことは明らか。
「2回までが勝負。それまでに相手が倒れなかったら、自分の負け」
彼の言葉だ。
そんな刹那的、破滅的な戦い方が彼のプロとしての魅力でもあるのだが、本格的に、ボクサーとして大成するためには、やはり、スタミナをしっかりと強化することが重要だろう。
第二に、精神面、自己抑制能力の強化だ。
なんだか、難しい言葉を使ってしまったが、要するに、
「かっとなって、我を忘れないように。熱くならずに冷静になろう」ということだ。
荒井は、試合中、興奮しすぎて、肩に力が入りすぎてしまい、パンチがフック気味、さらに大振りになってしまい、打ち終わりに不用意なパンチをたびたびもらってしまう。
また、攻撃に夢中になって、ついついガードが下がってしまって、そこを打たれて、ダメージを負ってしまうことも多い。
それでも、持ち前の強打で、相手を倒してきたからこそ、6勝2敗という好戦績を収め、全日本新人王にも輝いたわけだが、逆に、この欠点が原因で敗れてしまった試合もある。
2005年4月5日の竹山昭(本多ジム)戦がまさにそれ。
この試合、ガードが甘くなった荒井は竹山のパンチをもらい、1回KO負けに。
荒井はウエルター級。
同階級の日本王者大曲(ヨネクラジム)や、東洋太平洋王者山口(ヨネクラジム)に挑戦し、さらに「世界」を狙うボクサーとして、一段の飛躍を遂げるためにはスタミナ、精神面の強化が不可欠に思えるのだ。
今日の試合でも、荒井の「狂拳」ファイトは健在。
咆哮し、対戦相手をにらみつけ、ゴングが鳴るや、一気にラッシュ。
館内は「ミサオコール」
1回は、手数と攻勢面では荒井のラウンドだが、相手の高橋のガードも固い。
ところが、早くも2回後半から荒井の動きに、失速の兆候。
目に見えて、手数が減る。
反撃に転じた高橋が、2回、3回を優勢に。
やはり、スタミナ切れか、と思われた4回
荒井が、逆に、前に出て、猛然とラッシュ。この回は明らかに荒井のラウンド。
5回は、もみ合いの中、荒井は、ラスト20秒に、一気にパンチをまとめ、優勢を印象付ける。
6回もラスト20秒に荒井が手数を繰り出し、攻勢に。
7回には、1回の立ち上がりに見せたような猛ラッシュを再開。
高橋は手が出なくなり、防戦一方。
8回には高橋も最後の意地を見せて、ほぼ互角のラウンドで、試合終了に。
私の採点では78-75で荒井。14,5,6,7回を荒井が取り、2,3回を高橋が取った。
8回は10-10とした。
ジャッジの採点は、一名が79-74で荒井。二名が79-73で荒井。3-0で荒井が勝った。
正直、荒井が8回まで、戦えるスタミナを持っていたとは思わなかった。
2回を過ぎたら、「失速」し、高橋が勝利すると思っていた。
ところが、スタミナが「失速」したのは、むしろ、高橋の方だった。
ジムの関係者に確かめていないので、推測の域をでないのだが、おそらく、スタミナ強化に向けて、走りこみなど、相当、厳しい練習を重ねて、この日の試合に臨んだのだろう。
また、5回、6回など、ラウンドの終わりに、あえて、ラッシュを仕掛けていたのも、ジャッジに優勢を印象付ける作戦か。
2回.3回に手数が止まったのは、ペース配分を考えて、あえて、スタミナの温存をはかったのかもしれない。
荒井がこのように、頭を使って、巧みな試合運びをするとはまったく予想していなかった。
KO勝ちができなかった事は残念だったろうが、8ラウンド、フルに戦った経験は、今後の更なる飛躍に向けて、貴重な財産になるはずだ。
第5試合 132パウンド8回戦 ○川村貢冶(2回1分40秒KO)マンコントーン●
2005年フェザー級新人王、日本フェザー級10位、横浜光ジムの川村(8勝3KO1分24歳)が、タイのマンコントーン・ポンソムクワーム(3勝1KO5敗20歳)に2回、KO勝ち。
川村はパンチ力抜群のホープ。この日は、左にステップを踏みつつ、左ボディアッパーを決め、2回、この左ボディをフェイントに使っての右ストレート一閃。
マンコントーンをキャンバスに沈めた。
第6試合 スーパーフェザー級8回戦 ○小口雅之(3-0 5回負傷判定)柴田大地●
草加有沢ジムの「ズラボクサー」小口雅之(9勝3KO4敗2分28歳)がファイティング原田ジムの柴田大地(6勝4KO9敗2分31歳)に、5回負傷判定で勝利。
この日の興行の事実上のメインイベント。
因縁?の再戦を制したのは、小口。
入場シーンから、小口は素晴らしい「受け身(リアクション)」を取ってみせる。
「ズラボクサー」として話題となったことを活かして、今回も「ズラ」で入場。
それも、長髪の・・・・ 上は試合前(使用後?) 下は試合後(使用前?)
リングに上がるや、このカツラをとって、観客席に投げ入れるパフォーマンス。
場内、大爆笑。
(20万もしたそうだから、後で回収したんでしょうけど・・・・)
ゴングが鳴るや、グローブタッチも拒み突進したのは、柴田。
小口のパフォーマンスを、目の前で見せ付けられて、面白くない気持ちも分かる。
しかし、冷静さを欠き、はやる柴田は開始1分30秒過ぎ、小口のパンチを不用意にもらって、ダウン。
立ち上がった柴田はこれで、かえって、冷静さを取り戻したよう。
その後は、頭から前に出て、距離を詰める柴田に、足を使って、体を振って、さばく小口という展開。
ただし、パンチの的確さ、では小口が勝る。
3回、偶然のバッティングで、柴田が右の目の上をカット。
4回2分過ぎ、小口の右ストレートがクリーンヒット。さらにたたみかける小口。
柴田の傷はさらに広がる。
5回19秒、柴田、傷口からの出血が止まらず、レフェリーが試合をストップ。
負傷判定となり、3-0で小口が勝った。
ジャッジの判定は、50-46が1名。49-47が2名。
第7試合 138パウンド契約8回戦 ○石井一太郎(1回2分39秒KO)ルンペット・シスサイソン
日本ライト級1位、横浜光ジムの石井(15勝14KO1敗1分23歳)がタイのルンペット・シスサイソンに対し、1回、左のボディアッパーから、アゴに左アッパーを返して、KO勝利
石井の入場テーマ曲は、プロレスラー大谷新二郎が使っているものと同じ。
第8試合 53キロ契約8回戦 ○三枝健二(3-0判定)伊藤克憲●
日本スーパーフライ級5位、新開ジムの三枝(14勝8KO3敗1分23歳)が、角海老宝石ジムの伊藤(16勝1KO7敗4分)を3-0の判定で下した。
伊藤は、ガードをしっかり固めて、上体を振って、前進。三枝は足を使って、左に回りながら、ジャブを切らさず、「打っては動く」アウトボクシングでペースをつかむ。
1回、2回と、三枝のラウンド。
ところが、3回、三枝が打って、左に回ったところ、伊藤は思い切り、踏み込んで、左フック。このフックの射程は、三枝の想定以上だったようで、三枝の顔面をとらえ、キャンバスにしりもち。ところが、判定はスリップ。
立ち上がった三枝は動揺を隠せず、むきになって正面から打ち合いにいって、伊藤のパンチを浴びる。
この回は伊藤のラウンド。
4回。伊藤の飛び込みざまの左フックが三枝にヒット。三枝は、元のアウトボクシングに戻し、伊藤の攻撃をさばく。この回はほぼ互角。
5回は、手数で三枝。
6回から、三枝に変化が・・・・
なんと、三枝らしい「アウトボクシング」を捨てて、ラウンド半ばから、足を止めて、伊藤と打ち合いに。これには、場内、沸騰。
7回も、残り1分で、両者、足を止めて打ち合い。
最終8回も両者、壮烈に打ち合い。
大歓声の中、試合は終了。
両者、抱き合って、お互いの健闘を称えた。
私の判定は79-75で三枝。
ジャッジの判定はいずれも三枝を支持。
79-75が2名。77-76が1名だった。
なぜ、三枝選手は、6回から、アウトボクシングをせずに、足を止めての打ち合いにいったのか。
伊藤は27試合で、16勝。
うち、KO勝ちはひとつしかない。
打ち合っても、大丈夫という判断もあったのだろう。
ただ、それとは別に、会場に集まったファンの雰囲気、期待にこたえたという要素もあったように感じられた。
ここまで盛り上がった会場の熱をさらに盛り上げ、きっちりとメインを締めたい、という三枝選手の「プロ根性」「プロの感性」があえて、足を止めての打ち合いに踏み込ませたという面もあったのではないだろうか。
敗れた伊藤選手も満足気な表情を浮かべていて、これも、観客を熱くさせるいい試合ができたことへの喜びだったと思う。
興行全体を通しての感想だが、「小口効果」といってよいのか、多くの観客が集まり、また、会場に熱があって、一言で言って「面白かった」
会場を出るお客さんひとりひとりの表情も生き生きとしていて楽しげだ・・・
4試合目の荒井が一気に会場に火をつけて、その熱を小口が盛り上げ、三枝と伊藤がきっちり締めて、観客を満足させた・・・
間にはさまった、川村対マンコントーンと、石井対ルンペットが、それぞれ、2回KO,1回KOと短く、決着がついたため、一度、盛り上がった会場の熱が、冷えずに済んだ。
モチベーションが不足気味?なのに、妙に、タイ人が意地を張って、粘ったり、逆に、川村や石井が、KOを狙うリスクを冒すのを躊躇して、倒しにいかず、だらだらだらだらと、8回まで試合をしていたら、間延びした興行になっていたはずだ。
時間も5時45分に始まり、8時半には終わった。正味、2時間45分。
ボクシングの興行は、真剣勝負だけに、ときには4時間以上かかってしまう場合もある。
遠方から来た人など帰りの電車の時刻も気になるだろうし、正直、疲れてしまうだろう。
やはり、このくらいの時間で終わるのがベストではないだろうか。
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