8/1 東日本新人王準々決勝(現地ナマ観戦記) |
昨年の新人王戦線で旋風を巻き起こしたドリームジム
ミニマム級で、春日井智晴選手 スーパーフライ級で、鈴木雄大選手がベスト4に挑戦
フライ級では、有力な優勝候補同士が激突
金子ジムの市川亮太選手 対 ワタナベジムの金城智哉選手
この日の興行、最大5名参加のヨネクラジム勢
バンタム級に秋谷将司選手 ライト級に篠崎生思郎選手 佐々木悟選手
ウエルター級に出田裕一選手 剣持哲男選手
「ヨネクラ5人衆」は、果たして、何人生き残れたのか
ウエルター級では、個性的な「名物ボクサー」が2名登場
一人は、6月29日の東日本新人王予選で起こった「ダブル・ノックダウン」の当事者
(6月29日の興行は、「ボクレポ」観戦記の過去記事にあります)
JBスポーツジムの宮本成日選手
この宮本、「ダブルノックダウン」であったにも関わらず、自分だけがダウンしたと勘違い
その失点を取り返そうと猛然と、攻め立てて、楠三好ジムの五十嵐選手に判定勝ちできた
という「天然キャラ」
もう一人は京浜川崎ジムの七島一善選手
対戦前の挑発パフォーマンス 勝利の後のダンスパフォーマンス
派手さと存在感では、この大会、出色のトンパチボクサー
宮本は、国際ジムの遠藤選手 七島は、ヨネクラジムの剣持選手と激突する
この日の興行は全14試合
14人のボクサーが全日本新人王の夢に前進、準決勝に勝ち進み 14人が涙を飲んだ
第1試合 ミニマム級△春日井智晴(1-0ドロー、春日井が勝者扱い)溝口ヒロキ△
ドリームジムの春日井(4勝1敗、25歳)と、協栄ジムの溝口(4勝2KO2敗、23歳)の一戦
は、1-0のドロー
公式記録上はドローながら、優勢点は春日井にあるとされ、春日井が勝者扱い、
準決勝に進出した。
ガードをしっかり固めて、前に出る春日井に、溝口は、強烈な左ボディアッパーからの
コンビネーションで応戦
3回、4回と、溝口のボディ攻撃の効果か、春日井の手数が減って、流れは溝口に
ジャッジ1名は39-38で、溝口を支持したが、残り2名のジャッジは39-39 38-38
この2名がいずれも、優勢点は春日井にあると判断、春日井が規定により、準決勝進出に
1-0で、ポイント上はまさっている溝口にとっては、とても、かわいそうな判定
試合開始直後から積極的に前に出る春日井に対して、立ち上がり、やや出遅れたのが
響いてしまった
第2試合 ライトフライ級 ○伊藤和貴(3-0判定)坂入康太●
沼田ジムの伊藤(2勝1KO2敗、21歳)が、18古河ジムの坂入(5勝3KO、24歳)に3-0
の判定勝ち(39-38 39-38 39-38)
サウスポーの伊藤が、右を出しながら、足を使って、距離をとり、ロングレンジの鋭い
左ストレートを打ち込んで、ペースをつかんだ。
ここまで全勝の坂入は、常にあごが上がり気味ながら、果敢に前に出ており、最終4回
ゴングとともに大声で自分に気合いを入れるなど、気持ちの強さは伝わる選手
しかし、距離を支配し、的確に、有効打を入れていたのは伊藤だった。
第3試合 フライ級 ○金城智哉(2回1分45秒KO)市川亮太●
有力な優勝候補の二強、が激突
ワタナベジムの金城(6勝1KO1敗1分、21歳)が、2回、鮮やかな右クロスで、金子ジム
の市川(4勝2KO2敗、22歳)をキャンバスに沈めて、準決勝進出
1回から、金城は、ワンツーから左ボディを打ち込み、ペースをつかむ。
特に、金城のコンパクトな振り出しで、まっすぐ伸びる右ストレートが次々にヒット
2回、金城の右クロスが、市川を直撃
一瞬、なんとか踏ん張ろうとした市川だったが、ダメージは深く、膝からキャンバスに崩れ
落ちる。
即座に、セコンドがタオルを投入し、金城のKO勝ちに
負けた市川は、キャンバスに膝をついたまま、呆然自失
第4試合 スーパーフライ級 ○鈴木雄大(3-0判定)臼井裕介●
ドリームジムの鈴木(3勝1KO1敗、21歳)が、石川ジムの臼井(5勝3敗、21歳)に3-0
の判定勝ち(39-38 40-38 40-38)
ドリームジムは、ミニマムの春日井に次いで、スーパーフライの鈴木もベスト4に進出
ドリームジムの選手の戦い方について、この日の春日井選手、鈴木選手のボクシングを
見て気付いた点
①ガードは下げずに、しっかりとあごをカバー
②1回から前に出て、圧力をかけて、手数を振るうアグレッシブなスタイル
③ステップインのスピードが速く、踏み込む距離が長い
④ステップインして、右のクロスを狙う展開が目に付く。
⑤④に関連するが、攻撃は、ワンツー、上下といった基本の攻撃パターンに「意外性」を
重視した変則的な攻撃を織り交ぜていく傾向が強い
特に、②のステップイン
明らかに、他のジムの選手に比べて、ドリームジムの選手の踏み込みは思い切りがよい
ガードを固めつつ、大胆にステップインして、手数を振るう
その分、バッティングが多くなったり、踏み込まれた相手と、もみあってクリンチになる展開も
多い
しかし、考えてみると、クリンチになって、局面が膠着した場合、踏み込まれたほうより、
踏み込んだほうにポイントが流れ勝ちな面もある。
対応策として、第1試合、協栄ジムの溝口選手は、ボディ攻撃で、スタミナを奪い、足を
止めるやり方をとっていた。
この第4試合、鈴木選手に対し、臼井選手は、右のクロスに、左のフックを合わせる場面が
何度かあった。
第5試合 バンタム級 ○粉川拓也(4回52秒KO)トップネーション大原●
宮田ジムの粉川(4勝1KO、21歳)が、川島ジムのトップネーション大原(4勝2KO2敗、
30歳)に、4回52秒、KO勝ち
前に出て、攻勢をとる粉川に、大原は川島ジムの選手らしく、ウイービング、ヘッドスリップ
でかわしていく。
しかし、防御から、攻撃へのつなぎが見えず、攻撃への切り替えがスムーズに行かない
状況のまま、「受け」に回りがちで、手数負け
4回、粉川の右フックでダウン 立ちあがったところ、パンチをまとめられてKO負けに
第6試合 バンタム級 〇大北正人(3-0判定)カモン・コータツ●
東京農業大学ボクシング部出身、角海老宝石ジムの大北(4勝2KO1敗、26歳)が、宮田
ジムのカモン・コータツ(4勝2KO1分、21歳)に3-0の判定勝ち(39-37 40-38 40-37)
1回、グローブタッチもせずに、突っ込む気合い十分のカモン
しかし、気負いすぎで、力んでしまって、パンチは大振り
打ち終わり、バランスを崩す場面も
アマ名門 東京農大ボクシング部出身の大北は、落ち着いて、相手の動きをよく見て、足を
使って、回って、カモンのプレスをさばき、有効打を積み重ねた
第7試合 バンタム級 ○石本良次(3-0判定)秋谷将司●
協栄札幌赤坂ジムの石本(4勝2KO1敗、25歳)が、ヨネクラジムの秋谷(3勝2KO2敗2分
25歳)に3-0の判定勝ち(40-37 40-37 40-36)
石本は、連打が巧みで、上下に打ち分け、手数でまさる
秋谷は、足のためがなく、動きに切れを欠いた
第8試合 スーパーバンタム級 〇人見斉光(4回43秒TKO)奥山慶明●
帝拳ジムの人見(5勝3KO1敗、26歳)が、T&Tジムの奥山(4勝2KO3敗1分、22歳)を
4回43秒、TKOに下す。
試合開始直後、奥山の右を不用意にもらってしまった人見だったが、その後は、帝拳ジム
らしい上下に打ち分ける攻撃
特に、ボディブローが効いて、奥山は、動きが落ちる。
4回、人見の連打の前に、棒立ちの奥山
ダメージが深いと判断したレフェリーが試合を止めた
第9試合 ライト級 ○篠崎生思郎(3-0判定)高田茂●
ヨネクラジムの篠崎兄(4勝1KO1敗、29歳)が、マナベジムの高田(3勝2KO2敗、24歳)に
3-0の判定勝ち(39-38 39-38 39-38)
今年の新人王予選にエントリーしたヨネクラジムの篠崎兄弟
弟の賢生王は、スーパーフェザー級に
7月18日に行われた予選で、激闘の末、角海老宝石勝又ジムの関本に敗れている
(「ボクレポ」現地ナマ観戦記所収)
対戦相手の高田は、フットワークが巧みなサウスポーのアウトボクサー
リング全体を、使って、サークリングしつつ、距離をとって、鋭い左ストレートを打ち込む
前に出て、手数を振るうのは、篠崎兄だが、自分の距離で常に戦い、的確に有効打を決めて
いたのは、高田に見えた。
しかし、ジャッジの採点は、三者とも39-38で、篠崎を支持
第10試合 ライト級 ○佐々木悟(4回1分18秒TKO)生田真敬●
ヨネクラジムの佐々木悟(2勝2KO1敗、24歳)が、ワタナベジムの生田(4勝2KO2敗24歳)
に4回、TKO勝ち
サウスポーの佐々木は、前に出て、プレスをかけて主導権を奪う
4回、パンチをまとめて、TKO勝ち
第11試合 ライト級△今泉陽介(1-0のドロー今泉の勝者扱い)鈴木裕輔△
沼田ジムの今泉(5勝1KO2敗、21歳)と新日本木村ジムの鈴木(3勝1KO、22歳)の一戦
1回から、最終4回まで、両者、足を止めて、頭を付け合っての打ち合い
この日の「ベストバウト」に思えた
パンチの振りが小さく、ボデイ狙いに徹していた今泉が、優位に思えたが、判定は1-0ドロー
(39-38今泉 38-38 39-39)
優勢点で、リードしていた今泉が、準決勝に進出
第12試合 ウエルター級 ○出田裕一(3-0判定)根間裕人●
東京農業大学ボクシング部出身のヨネクラジムのホープ出田(3勝2KO、21歳)が、横浜光
ジムの根間(3勝3KO3敗、22歳)に3-0の判定勝ち(40-38 40-36 40-36)
アマ出身らしく、アップライトの構えの出田は、リーチの長い根間の中に入って、有効打を
集めて、試合をリード
根間が突き放しにかかると、クリンチも多用して、距離をつぶしてしまう。
距離を支配し、手数にまさった出田が、判定勝ちで、準決勝進出
ウエルター級の有力な優勝候補
第13試合 ウエルター級 ○宮本成日(2-1判定)遠藤裕之●
「天然系ダブルノックダウン男」JBスポーツジムの宮本(2勝1KO、25歳)が国際ジムの
遠藤(3勝1KO1敗、24歳)に、2-1の判定勝ち
「減量などくそ食らえ」といったビヤ樽型の体型の宮本は、低い姿勢から、左右のフックを
振り回す
遠藤も応戦し、両者、白熱の打ち合いに
判定は大きく割れて、一人のジャッジは39-38で遠藤 一人は39-37で宮本 三人目の
ジャッジが40-37で宮本
宮本が準決勝に
第14試合 ウエルター級 ○七島一善(2回3分4秒KO)剣持哲男●
今回の新人王戦参加ボクサーの中でも、「トンパチ度」は一番!トンパチMVP!
京浜川崎ジムの七島(4勝3KO1敗、21歳)が、ヨネクラジムの剣持(4勝2敗、27歳)
にKO勝ち
いつものように、勝利のダンス?を披露した後、勝利の咆哮
場内を大いに湧かせた
この日の興行で、もっとも素晴らしい勝利をあげた選手に贈られる「ウイニング賞」は、第10
試合に登場したライト級の佐々木選手に
最後に・・・・・
前後しますが、亀田選手のあの試合 ボクシングファンとして、恥ずかしい限り
もう、プロボクシングそのものに愛想が尽きた、というファンの方も多いのではないでしょうか
でも、ファンをやめる前に、もう一度、後楽園ホールに足を運んでみてください
空席が目立つ中でも、夢に向けて、全力で戦うボクサーたちの姿を、もう一度、目に焼き付け
てみてください。
特に、この新人王戦は、純度100%、混じりけのないただただ、ひたむきな「魂の削りあい」
です。
8月2日深夜、横浜アリーナから、苦々しい思いで、私は、帰宅しました
でも、このレポートを書き、写真を確認する中で、試合の記憶がよみがえり、あらためて
ボクシングの素晴らしさを実感
救われた思いでいます。
クリックいただければ励みになります。人気ブログランキング
こちらもクリックいただければ励みになります。ブログランキング【ブログの殿堂】