王者木村V7!激戦松橋対野中 川村対室井(8.5後楽園ホール) |
全8試合中、見どころは後半3試合
第6試合では、無敗の2005年フェザー級新人王、日本ランク10位の
横浜光ジム川村貢治が、ワタナベジムの室井啓宏と激突
叩き上げの雑草ボクサー室井は17戦のキャリアの中で、日本ランカーとの対戦は
今回、初めて
待ちに待ち続けて、ようやくめぐってきたビッグチャンス
無敗新人王のエリートボクサーを食って、念願のランク入りを果たすことができるのか
また、第7試合 セミファイナルでは、スーパーウエルター級の「三冠王」クレイジーキム選手
への挑戦をかけて、帝拳ジムの「北海の豪腕」松橋拓二と、尼崎ジムの野中悠樹のランカー
対決
そして、メインは6度の防衛を達成中の「絶対王者」
38戦28勝、13KO、5敗2分け 28歳
日本スーパーライト級チャンピオン、横浜光ジム、木村登勇の防衛戦
対戦相手は八王子中屋ジムの小暮飛鴻 31歳
1999年全日本新人王獲得 26戦19勝、8KO、6敗
2001年1月に当時の同級王者前田宏行に挑戦するが7回KO負け
その後、ランク落ちも経験しながら、ボクシングに対する情熱は全くさめず
くさらずに努力を続け、約5年7ヶ月ぶり、2度目の日本王座挑戦というチャンスを得た
この小暮選手、ホームページを見てもわかるが、かなり個性的
というより、よい意味で、いっちゃってるボクサーだ
普通に考えれば、絶対的な強さを誇る木村の勝ちは動かない
しかし、「変人」小暮には何かをやってくれそうな意外性が期待できる
王者木村登勇は2002年3月9日、ヨネクラジムの嶋田雄大選手に負けて以後11連勝、
約4年5ヶ月、敗北の苦さを味わっていない
強さの秘密は「木村術」と自称する独自のテクニック
「いかに相手のパンチを避けて、いかに自分のパンチを当てるか」
勝利のために、日々の練習、実戦経験の中から、細かい工夫を積み上げて木村選手自身が
編み出したもの
木村のボクシング人生の結晶だ
「木村術」 その詳細は一切不明
ただし、その内容を推し量る手がかりは今までの試合や木村自身の発言の中にあるはず。
まずは、木村選手自身の発言から
①木村術の基本は「人に教えてもらうのでなく、自分で考えること」
②「空いているところを打つんです。だからよく変な体勢から打つといわれたりしてるけど・・・」
③得意なパンチは木村術パンチ (横浜光ジムHPより)
④「ストレートにしてもいろんなストレートがあって、ジャブにしても、フック、アッパーにしても
いろんな種類があるんです。タイミングを変えたり、距離や角度を変えたり・・・それにリズ
ムですね。そんなことを自分なりに考えながらパンチを出しているんです。それが木村術
の実態ですかね」(原功氏のインタビューより)
次に木村選手の試合で目に付くポイント
①緩急自在 バランスがよく、動きがやわらかい
②左はノーモーションで打ち込まれる上、本来、右利きの選手の左
ということもあってか、軌道が独特で、出所が読みにくい
③ガードはやや下げ気味
④相手の動きをよく観察している
⑤思わぬ角度、体勢からパンチが出る。体がやわらかく、まさに
「空いているところ」を形にとらわれずに攻撃するボクシング
⑥パンチを打ち込むとほぼ同時に、頭が動く。頭を動かしながらのパンチ
⑦表情は常に冷静
⑧中間距離でのパンチの交換には絶対の自信 インファイトはやや苦手(佐々木戦など)
特に、注目すべきは②、⑤、⑥
木村選手のスタイルが、変幻自在で、つかみどころがないといわれる所以(ゆえん)だ。
木村術とは何か
決まった形、やり方にとらわれることなく、「打たれずに打つ」ことを自ら工夫し、実践する
ボクシング、といえるのではないだろうか
日本スーパーライト級タイトルマッチ10回戦
王者木村登勇対挑戦者小暮飛鴻
まずは、青コーナーから、小暮が、ハイテンションの入場
リングに上がるや、熱狂的なプロレスファンというだけあって、ロープに飛んでは跳ね返る
パフォーマンス
「バリバリバーニングエナジー」と叫ぶ小暮
イマイチ、意味不明ながら、勢いのよさ、気持ちの強さは十分、伝わる
続いて、赤コーナーから王者木村が入場
小暮とは対称的に、落ち着いた表情 余裕の表れか、笑みをたたえている
試合開始のゴング
気合い十分の小暮は、低い姿勢から前進して左右のフック
距離を詰めて、ふところに入って、ボディを狙うかまえ
立ち上がりこそ、小暮の出方にやや戸惑った木村だが、小暮の動きをよくみて、冷静に対処
入ってくるところに、近い距離では、左アッパー、右フック
離れた距離では、ノーモーションの左ストレートがヒット
それでもこの日の小暮は後退せずに、ひたすら前に
この気持ちの強さは評価できたが、5回には一方的に打ち込まれ、動きが止まる場面も
インファイトに持ち込もうとする作戦そのものは正しいのだが、この日の小暮選手
ひざが立ったまま、腰が引けた状態で、前に向かっていたように見えた
これでは、腰の入った力強いボディブローは打てない
また、距離の詰め方も、直線的に正面から、といったやり方が目立つ
たとえば、サウスポーの死角になる左に回りながら距離を詰めるといった工夫が
あるべきではなかったか
詰めてからの攻撃も、右のフックを多用していたのだが、木村選手に完全に見切られ
てしまっていた。
やはり、右よりは、左のフックを攻撃の軸にすえて、戦うべきだったと思う
2005年3月、協栄ジムの佐々木基樹選手は、木村選手にインファイトを仕掛けて、かなり
苦しめた。
佐々木選手の場合、詰め方がもっと力強く、ひざのばねを使って、体全体で、頭から突っ
込むように、木村のふところに入っていた
さらに、対サウスポーでは、威力を発揮するはずの、左のフックを木村のテンプルに何度と
なく打ち込んでいた。
小暮選手の詰め方は、佐々木選手に比べて、おとなしく、正直すぎたように感じてしまう。
そして、7回、顔を腫らせた小暮に、木村の左ストレートがクリーンヒット
棒立ちとなる中、小暮のダメージは深刻と判断したレフェリーが、割って入り、試合を止めた
7回2分59秒 TKOにより、木村が7度目の防衛に成功
WBCランク9位を守り、国内最強をあらためて証明した
この日の興行はほかに7試合
セミファイナルでは、「北海の豪腕」松橋が、日本タイトル前哨戦として、同じくランカーの
野中と激突
無敗の新人王、川村と叩き上げのノーランカー、室井の一戦も白熱した。
第7試合 スーパーウエルター級8回戦 ○松橋拓二(3-0判定)野中悠樹●
「北海の豪腕」日本スーパーウエルター級2位、帝拳ジムの松橋(11戦9勝9KO1敗1分)
が、同級4位、尼崎ジムの野中(12勝5KO5敗2分)に3-0の判定勝ち(78-76 78-75
79-74)
サウスポー同士の対決となったこの一戦
勝ったほうが、日本スーパーウエルター王者、クレイジーキムに挑戦、という位置づけ
同じサウスポー同士でありながら、ファイタータイプの松橋に、ボクサータイプの野中
1回 足を使って、距離をとって、右に回る野中が、左アッパーから右フックをヒット
2回 松橋は前に出て、強引に左右のフック
3回 松橋、手数と圧力で優勢 野中は右に回って、さばきつつも、有効打に劣る
4回 野中が、アウトボクシングでペースを握る 右に回りつつ、上下にフック
5回以降、松橋、打ち疲れが見えつつも、前に出て、左右のフック
6回 7回 足を使って、さばく野中に、プレスをかけて、豪打を振るう松橋
松橋のスタミナが切れるか それとも、松橋の豪打に野中のひざが崩れるか
試合は、我慢比べの消耗戦に
最終8回 汗みどろになりつつも最後まで、必死に前に出続けた松橋
判定は3-0で、松橋に下ったが、勝利が確定した瞬間、松橋は号泣
ぎりぎりまで追い詰められていたようで、タフな見ごたえのある一戦
第6試合 58キロ契約8回戦 ○川村貢治(2-1判定)室井啓宏●
日本フェザー級10位、2005年新人王、横浜光ジムの川村(9勝4KO1分)が、ワタナベジム
のノーランカー、室井(11勝1KO4敗2分)に2-1の判定勝ち
ワタナベジムの室井は、4回戦時代は、スーパーライト級の選手 その後、ライト級に下げて
さらに、スーパーフェザー級に下げて、今回、フェザー級に挑戦
キャリア18戦目にして、初の日本ランカーとの対戦だ
対戦相手横浜光ジムの川村は昨年のフェザー級新人王、鍛え上げられた上半身から放たれ
るパンチは凄まじい迫力。
左アッパーから、右ストレートのコンビネーションが特に目を引く
ランク入りのチャンスに燃える室井は、コールされるや、つかつかと川村のコーナーに歩み
寄って、グローブタッチ
ゴング直後、いきなり突っかけ、気合い十分
リーチに勝る川村は、左ジャブを突きつつ、距離をとって、右のストレート、フック、左アッパー
を狙う
室井は頭から中に入って、距離を詰めて、ボディ攻撃
川村の強烈なパンチが入るが、モチベーションにあふれた室井は、耐え抜いて、果敢に
反撃
6回まで、ほぼ互角の攻防
ややペースを奪われていた川村は7回から、あえて、距離を詰めて、正面から打ち合いに
ジャブで突き放す戦い方を変更し、距離を詰めて、ショートアッパーで、室井のボディを狙う
もともと、距離を詰める戦い方をとっていた室井は、左フックをふるって応戦
頭を付けてのインファイトに
最終8回 アグレッシブに攻める川村 7回と同様に、真っ向から打ち合う接近戦に
判定は、一人のジャッジは77-76と室井につけたが、残り二人は、78-76 77-76で、川村
を支持
2-1で川村が、室井を下した
敗れた室井は、キャンバスにひざを突いて呆然
悔しさをあらわにした表情で、リングを去った
第5試合フェザー級8回戦○栗田貴之(3-0判定)ダオロエク・スーンギラーノナイ●
ワタナベジムの栗田(6勝1KO1敗)がタイのダオロエクに3-0の判定勝ち
80-73 80-72 80-72と栗田が圧倒
第4試合 バンタム級6回戦 ○石本康隆(3回1分13秒TKO)早野吉男●
2005年東日本新人王戦決勝で、ヨネクラジムの杉田純一郎に、判定で惜敗した帝拳ジム
の石本(6勝1KO3敗)が、尼崎亀谷ジムの早野(5勝9敗1分)に3回TKO勝ち
早野はサウスポー ただし、左にあまり伸びはない代わりに右フックは迫力
おそらく実際は右利きと思う
2003年6月以来の試合
石本は、サウスポー攻略の定石通り、右のショートストレートを打ち込む
早野は石本の右に反応できず、全くパンチが見えていないよう
逆に、早野の攻撃は、ほとんど石本にブロックされてしまう。
2回 2分30秒過ぎ 石本、右に回りこんでの左フックが早野のあごに炸裂し、ダウン
3回 石本が左フック、右ストレートを連打 レフェリーが間に入って、試合を止めた
第3試合 フライ級4回戦 ○阿知和覧(2-0判定)村田真一●
横浜光ジムの阿知(1勝1KO)が、FIジムの村田(1勝1KO1敗)に2-0の判定勝ち
(39-37 39-37 38-38)
フライ級としては、体格的にややまさっている阿知は、プレスをかけて、左右のアッパー
村田は、脇を締めて、コンパクトなワンツーで応戦
2回 アッパーの連打で、村田のあごを浮かせた阿知だが、1分30秒過ぎには、村田の
右ショートをカウンターで、あごにもらって、かなりのダメージ
しかし、村田はここで、パンチをまとめることができず、阿知がダメージから少しずつ回復
3回も、詰めてのアッパーで押し込む阿知と、ストレート系のパンチで応戦する村田という
展開
4回 バッティングの注意を無視して、再三、頭から前に出る阿知に、一点減点
最後は村田、阿知、両者の気迫が真っ向からぶつかりあう打ち合いとなり、試合終了
全体として、体の大きさ、パワーを駆使して、前に押し込んでいた阿知の判定勝利に
ただ、村田もフォームが整っていて、コンパクトにパンチを打つ筋のよい、また気持ちの強い
好選手の印象
第2試合 フライ級4回戦 ○林徹磨(3-0判定)森道晴●
両者、デビュー戦
セレスジムの林が、八王子中屋ジムの森に3-0(40-37 40-36 40-36)の判定勝ち
手数、スピード、さらに、右のクロス、左ボディなど有効打にまさる林が終始、ペースを握り、
デビュー戦を白星で飾る
林は素晴らしい動き 来年の新人王戦への参加を期待したい
第1試合 ウエルター級4回戦 ○井沼朋(4回2分53秒TKO)広瀬尊明●
レパード玉熊ジムの井沼が、全日本パブリックジムの広瀬(4敗1分)を4回、TKOに下し、
デビュー戦を白星で飾る
打ち終わり、ガードが下がり気味であぶなっかしい広瀬だったが、4回まではやや押し気味
キャリア初の白星かと思われたが、最終4回、井沼の左フック、右ストレートをまともに浴びて
棒立ちになったところ、レフェリーが試合を止めた
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