坂本博之・本望信人 引退記念興行 (11.17後楽園ホール) |
「第427回ダイナミックグローブ」 角海老宝石ジム主催
「不動心」坂本博之 「勇往邁進」本望信人
角海老宝石ジムが誇る2人の英雄の引退記念興行
メインは二人の3ラウンドスパーリング
私事ながら、この記念すべき興行のパンフレットに
試合の見どころを伝える原稿を書かせていただくことになった
ボクシングファンとして本当に喜ばしくかつ名誉なこと
またこの日の興行
感動的だったのは、冨樫リングアナの坂本、本望両選手へのリングコール
私の拙いパンフ原稿とは比べ物にならないくらい
プロボクシングへの愛情に溢れた名文
さらに3ラウンドのスパーリングを終えた後の坂本、本望両選手のファンの皆様への挨拶
これもとても感動的
気持ちの伝わってくる名挨拶
私のパンフ原稿は全文を試合レポートの最後に「資料」として掲載
冨樫アナのリングコール、坂本、本望両選手の挨拶は試合レポート内で全文を紹介させて
いただくこととしたい
坂本、本望の引退記念スパーリング3ラウンドのほか
宮田対エスタニスラオの10回戦
さらに8回戦2試合 6回戦2試合 4回戦2試合
全8試合の熱闘を第1試合から順番に完全レポート
第1試合 フェザー級4回戦 △堀口祐輔(1-0ドロー)畠山宏行△
両選手デビュー戦
慶応大学商学部卒業、角海老宝石ジムの堀口と新日本大宮ジム、畠山の一戦
シャープなワンツーをヒットさせる畠山が先制
2回 堀口は距離を詰めて前に
アッパーで迎え撃つ畠山
堀口は頭をくっつけて左右のボディ
3回 両選手頭をつけあっての打ち合い
畠山、右目上をカット 流血
スタミナ消耗の様子
堀口が優位に
4回 なりふりかまわず堀口がプレス
ロープを背負わされる畠山
試合終了
私は1.2回が畠山 3.4回は堀口
ジャッジは39-38堀口 39-39 39-39
1-0のドローに
第2試合 57.5キロ契約4回戦 ○前田翔揮(3-0判定)佐々木健●
両選手、デビュー戦
角海老宝石ジムの前田が国分寺サイトージムの佐々木に3-0の判定勝ち
デビュー戦を白星で飾る
右ストレートを決める前田
佐々木はアッパーを織り交ぜたコンビネーション
有効打では前田が優位
勝敗は判定にゆだねられ40-36 40-36 40-37
3-0で前田の勝ち
第3試合 スーパーフライ級6回戦 ○藤井龍二(2-0判定)ハヤブサ鵜原●
角海老宝石ジムの藤井(3勝1KO2分け)がオサムジムの鵜原(3勝2KO9敗3分け)に
2-0の判定勝ち
移籍後初戦を白星で飾る
サウスポーの鵜原に対し、藤井はガードをしっかり固めて前に
3回ラスト15秒 藤井の右ストレートがヒット
ぐらつく鵜原
以後も的確に右を当てる藤井のペース
勝敗は判定にゆだねられ58-58 59-57 60-54
2-0で藤井の勝ち
第4試合 スーパーフェザー級6回戦 ○杉崎由夜(3-0判定)川合智●
コーエイ工業小田原ジムから移籍
田中栄民トレーナー門下生、角海老宝石ジムの杉崎(7勝3KO3敗)がグリーンツダジムの
川合(6勝2KO2敗2分け)に3-0の判定勝ち
1回からシャープな左ジャブを突く杉崎のペース
ジャブからの右を上下に
5回は不利な展開の川合が反撃
距離を詰め右フック、左アッパー
5回は川合のラウンド
最終6回は両選手打ち合い
試合終了
勝敗は判定にゆだねられ 58-57 59-57 59-57
3-0で杉崎の勝ち
田中トレーナー直伝の左ジャブでペースを握った杉崎が移籍初戦を白星で飾る
第5試合 スーパーライト級8回戦 △坂本大輔(三者三様ドロー)清田広大△
アマ戦績68戦53勝、習志野高校ボクシング部から拓殖大学を経てプロデビュー
2戦2勝2KO、角海老宝石ジムの坂本大輔と協栄ジムの清田(8勝8KO3敗1分け)
のハードパンチャー対決
両選手とも勝利はすべてKO
立ち上がりは坂本のペース
サウスポーの清田に右オーバーハンド、右フックがヒット
さらにショートの連打で清田をコーナーに
ところが4回 清田の左、ビッグパンチがヒット
流れが変わる
5回も清田のペース
6回 バッティングで坂本流血
坂本の右、連打に 清田の左、ビッグパンチの攻防
6回まで私は1差で坂本
1回、2回、6回を坂本
4回、5回を清田に
3回は10-10とした
7回 坂本に比べれば豊富なプロ経験から
清田、勝負どころと判断したのかこの回猛ラッシュ
坂本は下がらされる流れ
手数が出ない
7回は10-9 清田
最終8回 両選手、激しい打ち合いに
坂本は清田に釣られて大振りに
左のフェイントを入れた清田の右アッパー
私はこの回 有効打を評価して清田
試合終了
勝敗は判定にゆだねられ 78-76清田 78-76坂本 77-77
三者三様のドロー 引き分けに
第6試合 ミニマム級8回戦 ○松本博志(3-0判定)鬼道誠●
日本ミニマム級9位、角海老宝石ジムの松本(15勝7KO7敗4分け)とPABAライトフライ
級7位、TI山形ジムの鬼道誠ことジュリアス・アルコス(12勝3KO3敗、フィリピン)の一戦
1回 鬼道はスイング気味の豪快なパンチ
立ち上がり、サウスポーの松本は固い印象
しかし1回後半からボディ攻撃に活路
2回 松本、ていねいにボディ攻め
距離を詰めボディを叩いてはステップワークで離れる出入りのボクシング
下から上に連打
「ヒットアンドアウエー」でペースをつかむ
鬼道は大振り、単発傾向
再三にわたりオープンブローの注意
5回以降はボディのダメージとスタミナの消耗から手数負け
最終8回は劣勢の鬼道がカウンターを決めてみせる
試合終了
私の採点では1回と最終8回以外はすべて松本のラウンド
ジャッジは78-76 78-75 79-75
3-0で松本の勝ち
1999年5月、WBAミニマム級暫定世界王者ソンクラーム・ポーパオイン(タイ)とのノン
タイトル戦で勝利したこともある松本が出入りと連打のボクシング、で快勝
日本ランキングを守り過去2回挑んで果たせなかった日本タイトル挑戦に望みをつなぐ
第7試合 フェザー級10回戦 ○宮田芳憲(3-0判定)ルーベン・エスタニスラオ●
元日本フェザー級3位、角海老宝石ジムの宮田(21勝11KO5敗1分け)とWBCスーパー
バンタム級35位、メキシコのエスタニスラオ(18勝3KO9敗3分け)の一戦
1回 宮田は左を突きながら左回り
強い打ち出しの右を決めてペースをつかむ
エスタニスラオは独特の変則的な動き
柔軟なボディワークで攻める宮田のタイミングをはずし決定的なパンチはもらわない
しかし攻め手に欠ける印象
右の威力でポイントは宮田に流れる
KO勝利が期待された後半
この日の宮田は右のあとの返しが出ない
「コンビネーションだよ!コンビネーション」
師匠、田中トレーナーの叱責の声
6回はやや打ち疲れた宮田がパンチをもらう
エスタニスラオのラウンド
しかし7回以降はまたもや単発ではあっても強い右を当てる宮田のペースに
エスタニスラオは宮田のリズム、タイミングを狂わせる変則的な動きを披露するが
守勢一方
アグレッシブネス(積極性)に欠ける
試合終了
勝敗は判定にゆだねられ
97-95 97-94 98-93 3-0で宮田の勝ち
勝った宮田
内容には満足していない様子
引退記念エキジビションスパーリング3ラウンド 坂本博之対本望信人
青コーナーから「勇往邁進」本望信人
赤コーナーから「不動心」坂本博之、入場
「新世界」のメロディ
フセインシャーが掲げるOPBFベルト
肩には子供達が作ってくれた思いのこもった手製の「チャンピオンベルト」
両英雄 リングに対峙
「第427回ダイナミックグローブスペシャルスパーリング3ラウンドをもってひとつの時代の
二つの伝説にピリオドが打たれます」
熱のこもった表情の冨樫リングアナ
「角海老宝石ジムが誇った二つの伝説にそれぞれの終止符を打つこの3ラウンドのスパー
リングを裁くレフェリーは第22代日本スーパーウエルター級、二階級制覇、第42代日本ミ
ドル級チャンピオン、ビニー・マーチン!」
まずはレフェリー、ビニーマーチン氏を紹介
「第427回ダイナミックグローブスペシャルスパーリング3ラウンドを行います」
「赤コーナー、1991年12月14日プロデビュー。生涯成績は47戦39勝7敗1ドロー。
39勝のうち29勝がノックアウト。1993年2月に全日本ライト級新人王を獲得。
1994年と99年、年間ノックアウト賞。20世紀最後の2000年度年間最高試合賞など
合計4つの年間賞を受賞」
「スプリットデジッションで夢に届かなかった1997年7月のWBCライト級タイトルマッチ、
そして2000年3月のあの第一ラウンド、王者から立て続けにダウンを奪い確実にベルト
の感触を手のひらに残したWBA世界ライト級タイトルマッチなど最高峰への挑戦は合計
4度」
「その豪腕から平成のKOキングと称され、運や運命を否定し続けながら築き上げた15年
を越えるそのキャリアは」
「筋書きなどありえないこのスポーツの魅力と同時に過酷さ、残酷さをもわれわれに再認識
させ見守ってきた多くの人々の共感、思い入れとなり」
「もはや世界の肩書きなど不要とすら思えるその存在は20世紀末のカリスマ的ボクサーへ
と昇華」
「今年1月のラストファイト以降その存在感は現在、スポーツの枠をも越えた伝説的ボクサー
がこの聖地ともいわれる後楽園ホールのリングに今一度、降臨いたしました」
「ご来場のみなさまのみならずG+を通じてご覧いただいているボクシングファンの皆様
そしてこのスポーツに携わるすべての皆様、ほんのこのひととき最大級の賛辞をおねがい
します」
「第44代日本ライト級、第34代東洋太平洋ライト級チャンピオン!」
「不動心、坂本博之!!」
続いて青コーナーに向き直る冨樫アナ
「対する青コーナーはその群を抜いた運動神経から繰り出す技巧をもって議論の余地なく
今世紀のボクシングの扉を開けた後世に語り継がれるボクサーです」
「1996年3月4日 プロデビュー。生涯戦績は36戦29勝5敗2引き分け。29勝のうち5勝が
ノックアウト。1999年A級ボクサートーナメントフェザー級優勝」
「2002年8月日本スーパーフェザー級王座につき在位は3年を越え、この卓越した技術を
もって築きあげた8度の防衛達成後に自らタイトルを返上」
「2006年5月東洋太平洋スーパーフェザー級王座を獲得7年間無敗、16連勝の記録ととも
に初防衛達成後WBA世界スーパーフェザー級第二位のランクを引っさげ」
「怪物とも称され18試合連続第一ラウンドノックアウトの世界記録を持つ不世出の王者に
今年5月果敢にチャレンジ」
「全戦全勝、すべてがノックアウトというチャンピオンに対して真っ向から自ら距離を詰め、
ついにはダウンすら伝説的王者に与えなかったその試合で披露したテクニックやスピード
という自信に裏打ちされた衝撃的な勇気は」
「新世紀、このボクシングというスポーツが向かうべき羅針盤にひとつの方向性を示しました」
「皮肉にもその試合が彼のラストファイトとなり、ファンや関係者のまだまだやれるはずという
いわぬが花の言葉を振り切り本日このメッカ、後楽園ホールで最後の技術を余すところなく
披露します。」
「どうぞみなさま、今一度、最大級のスタンディングオベーションをおねがいします!」
「第40代日本スーパーフェザー級、第35代東洋太平洋スーパーフェザー級チャンピオン」
「勇往邁進、本望信人!!」
会場の盛り上がりは最高潮に
スパーリング開始
先手をとったのは坂本
低い姿勢からボディに左右のフックを放つ
驚異的な破壊力を誇った左フックのフォームは健在
本望は押され気味ながら巧みなボディワーク
ポイントをずらし決定的なパンチはもらわない
1回終了
坂本の手数がまさったラウンド
2回 これまで後手に回っていた本望が動く
左をついて坂本の前進をけん制
中に入って連打
素早く離れてみせる
出入り、ヒットアンドアウエー
坂本の強い左右のフックはブロッキング
打ち終わりに連打
2回終了
本望の有効打がまさったラウンド
そして最終3回
坂本、右オーバーハンド
さらに左右のフックを下に振るってプレス
しかし本望のディフェンスはクリーンヒットを許さない
低い姿勢で前進する坂本にアッパーを組み入れたコンビネーション
打ち終わりに出入りを効かせたフットワーク
坂本のアゴに向けてショートの連打
スパーリング終了
この回は2回に続いて本望の上手さが印象に残るラウンド
坂本のパンチの迫力も十分に伝わり両英雄の持ち味が発揮されたスパーリングに
両雄、お互いに健闘を称えあう
その後マイク
「今日はたくさんの方に引退式に来てもらって感謝しています。ありがとうございました」
「勇往邁進」本望信人の挨拶
みなさんに見に来ていただくのでみっともない姿、見せられないなと思ってできるかぎり練習
の時間を作って動いていたんですけれどもやはり現役のときのようには動けない自分がいて
すごく悔しかったんですけど」
「その中でも精一杯やってこうやってみなさんに見に来ていただいて、引退式ができて本当に
感謝しています」
「どうもありがとうございました!」
大きな拍手
続いて「不動心」坂本博之
「みなさん、今日は本当にどうもありがとう」
「もうぼくも引退してから11ヶ月になります。最初に2000年にぼくと畑山隆則との試合でぼく
がベルトをとれなかったということがありまして・・・」
「児童養護施設の子供達がこのチャンピオンベルトを作ってくれた。」
腰に巻かれた銀紙のチャンピオンベルト
「で、ぼくはそのときすごく複雑だったんですよ。自分が畑山隆則からベルトをとれなかった。
だからこれ、ホンモノのベルトに変えてやるって」
「そういう思いでモチベーションも上がり再起をするんですけれども、もう今となってはこう
やって引退して」
子供たちの思いのこもったベルトを指し示しながら
「世界にたった一つしかないんだなと思ったらとても贅沢になってきて本当に感謝して
おります!」
「で、ぼくは今日そのふるさとである和白青松園、福岡県の児童養護施設、そこにいきまして
ちょっと子供たちと遊んできました」
「遊んできたというか、いまその児童養護施設を、昭和39年ですから建物の建て替えという
ことでチャリティサイン会をやってきたんですよね。今日会場の前に設置されているこころの
青空基金、それを今日、全額和白青松園の建て替えの資金にさせてもらいますのでどうぞ
こころの青空基金に募金された方、本当にこの場を借りてお礼申し上げます。ありがとう
ございました。」
四方に頭を下げる
「ぼくもこの15年間、ボクシング生活でみんなからいろんなものをもらった。愛情、ぼくの
ボクシング人生すべては熱 」
「熱でもって接すれば熱でもってかえってくる。これが自分が15年間ボクシングで学んできた
ことでございます」
「この熱をみなさんに捧げます!どうもありがとうございました」
「熱」のこもったメッセージ
「熱」のこもった万雷の拍手
場内暗転
スポットライトが「二人の英雄」を照らし出す
テンカウント
会場のファンも起立
引退した他の角海老ボクサー達もリングに
資料
坂本・本望引退記念興行パンフレット原稿全文
角海老宝石ジムが誇る二人の英雄
「不動心」坂本博之 「勇往邁進」本望信人の引退記念興行
坂本博之は「平成のKOキング」の称号を持つハードパンチャー
1993年12月13日、リック吉村(石川ジム)を9回TKOに下し日本ライト級王座を獲得
1996年3月3日、ロジャー・ボレロス(フィリピン)を11回TKOに下し東洋太平洋ライト級
王座に君臨
1997年7月26日WBCライト級王者スティーブ・ジョンストン(米国)に挑戦
1998年8月23日にはWBCライト級王者、セサール・バサン(メキシコ)に挑戦するが
いずれも判定負け
2000年3月12日、WBAライト級王者ヒルベルト・セラノ(ベネズエラ)に挑戦
1回に2度のダウンを奪うも5回TKO負け
さらに同年10月11日には、セラノを敗りWBAライト級王者になった畑山隆則(横浜光ジム)
と自身4度目の世界戦
日本ボクシング史上に残る名勝負を展開するも10回KO負け
2007年1月6日、カノンスック(タイ)とのラストファイトを7回負傷判定で制し戦績46戦39勝29KO7敗、15年に及ぶプロボクサー生活の幕を閉じた。
本望信人は卓越したディフェンステクニックとボクシングセンスを誇る右ボクサータイプ
2007年5月3日、21戦全勝21KOの「怪物」エドウイン・バレロ(帝拳ジム)の持つWBA
スーパーフェザー級王座に挑戦
バレロのパンチを空転させて、カウンターを決める場面も多く大善戦
8回、右目の古傷が悪化、顔面血だるまになりながらもバレロを相手にあえて打ち合いに
ドクターチェックによりTKO負けになるも、「勇猛邁進」のキャッチフレーズに恥じない戦い
ぶりはファンの感動を呼んだ
試合後、本望は現役引退を表明
惜しまれつつも約11年に及ぶプロボクサー生活に別れを告げた
戦績36戦29勝(5KO)5敗2分
「剛」の坂本、「柔」の本望、対照的な二人の英雄が3ラウンドのエキジビション対決。
最後の勇姿をファンの目に焼き付ける。
セミに登場は宮田芳徳(角海老宝石ジム)。WBCスーパーバンタム級35位、元メキシコ
王者ルーベン・エスタニスラオと対戦。KO決着で花を添える
クリックいただければ励みになります。人気ブログランキング
こちらもクリックいただければ励みになります。【ブログの殿堂】