「現地ナマ観戦記 B級トーナメント6試合」(5.25後楽園ホール) |
全6試合、12名のB級ボクサーの意地と闘志が正面から激突した。
第1試合 バンタム級6回戦 ○芹江匡晋(3-0判定)森博行●
伴流ジムの芹江(5勝1KO3敗、23歳)が、ワタナベジムの森(4勝1KO4敗、22歳)に3-0の判定勝ち。
リーチ、身長に勝る芹江は、伴流ジムの選手らしい鋭い踏み込みからの思い切りのよいパンチを入れるや、すぐに距離をとるアウトボクシングで、森を寄せつけない。
中に入りたい森だが、「体形的なハンデ」(難しい表現を使いましたが、要は、身長の割りに、○○が、あまりに短かい、ということです。察してください)からくるリーチの違いの影響は大
きい。
そのハンデを補うべきはずの、大胆な追い足、踏み込みの切れも、最後まで見られず。
59-55、60-55,60-55の大差の判定で、芹江が勝利した。
次の試合から、B級トーナメント予選がいよいよスタート
8月23日の準決勝、10月24日の決勝に向けて、熱戦が展開された。
第2試合 フライ級5回戦 ○神谷優季(3-0判定)荻野寛之●
ピューマ渡久地ジムの神谷(1勝1敗、24歳)が、TアンドTジムの荻野(5勝5敗、22歳)に、3-0の判定勝ち。
1回から3回まで、神谷が、荻野を圧倒。
パンチに迫力があり、上下の打ち分けも巧み。連打も利く。
荻野は、神谷の圧力に押されがち。
攻めも、ワンツー主体で神谷に比べると、やや単調。
4回、劣勢を挽回しようと、前に出た荻野だが、神谷の強烈な左ボディアッパーをもらい、ダメージからか、プレスが鈍る。
しかし、神谷も、この回の後半あたりから、打ち疲れの様相 ガードが下がり気味に
最終5回は、疲れの見える神谷と、タフな荻野の打ち合いで、ほぼ互角
判定は、48-47、49-48、49-47の3-0で、神谷が勝った。
この神谷、沖縄県出身者らしい彫りの深い顔立ちで、なかなかの「イケメン」
ラウンド中、観客席から、複数の女性ファンから、「ゆーきー、がんばってー!」「ゆーきー、ゆーきくーん!」とか。
この日のホールのこってり、どんよりしたボクオタ臭漂うディープな雰囲気とは、場違いな、黄色い声援が、けっこうあった。(正直、うらやましいっす?)
第3試合 フェザー級5回戦 ○大木鉄也(3-0判定)伊藤健剛●
国際ジムの大木(5勝4KO3敗、27歳)が、本多ジムの伊藤(10戦5勝5KO5敗、24歳)
に、3-0の判定勝ち。
5勝全てがKO、スキンヘッドで、リーチもあるハードパンチャーの伊藤だが、対戦相手、サウスポーの大木に比べて、力みがあるのか、やや動きが固い印象。
上体の動きが固く、パンチも、一発、一発をしっかりと打ち込むといった感じで、ハンドスピードに乏しく、コンビネーションがスムーズに出にくい。
また、ステップの面でも、べた足気味。
大木は、連打の回転もよく、フットワークも機敏。
詰められそうになっても、「回って」体を入れ替えて、逆に攻勢に出る、といった動きも。
パンチも、やや迫力には欠けるものの、コンパクトで的確。
49-48、49-47、49-47の3-0で伊藤を下した。
第4試合 フェザー級5回戦 ○小平恵司(ドロー判定)東上剛●
ドリームジム期待の成長株、東上(6勝1KO3敗1分、25歳)と、伴流ジムの小平(7勝3KO
1敗、26歳)の対戦。
小刻みに頭を振りつつ、ゆったりとした動きの中、急にパンチを繰り出す、緩急をつけた変則的なボクシングが伴龍ジム、小平の持ち味。
正統派の筋のよいボクシングの東上は、やりにくそうで、1回から3回まではやや小平ペース
4回 東上は思い切って、前に出て、連打を繰り出し、小平を詰めにかかる。
この回は手数の差で、攻勢をとっていた東上か。
最終5回も、東上が優勢。 私の採点では、48-47で東上が勝ち。
前半の失点を挽回したように思われたが、判定結果は、一人が49-48で東上。
もう一人は49-48で小平。 最後のジャッジが48-48のドロー。
ただし、優勢点は小平にあるとされ、小平が準決勝に進出した。
第5試合 ライト級5回戦 ○日高慎一(2-0判定)木村勇大●
尼崎ジムの日高(8勝7KO2敗、22歳)が、石川ジムの木村(8勝2KO3敗、21歳)に、
2-0の判定勝ち。
8勝2KO3敗、という戦績からも、想像がつくが、木村は、パンチ力にやや欠ける。
しかし、反面、ステップワーク、あるいは相手のパンチをかわす技術は巧み。
日高は、脇をしぼったコンパクトなパンチで攻めるが、木村のディフェンス技術の前に、なかなか有効打を奪えない。
ところが、木村も、攻め足に欠け、攻勢に出られない。
どちらのラウンドとも判断しにくい展開が続くが、最終5回、ラスト10秒、日高の左フックが木村にクリーンヒット
この回、この一発をとって、日高につけたジャッジもいたはずで、結果は、一人のジャッジが49-48で日高、二人目が50-47で日高、最後は48-48でドロー
2-0で、日高が勝った。
第6試合 ライト級5回戦 ○宮本隆憲(3-0判定)八木橋淑郎●
HS山上ジムの宮本(5勝2KO3敗、23歳)が、オサムジムの八木橋(6勝1KO9敗、33歳)
を3-0の判定で下した。
八木橋は、今日、トーナメントに参加したB級ボクサー、唯一の30代、また、唯一の、戦績負け越しの選手。
地力の差か、若い宮本に、押されがちの八木橋。
それでも、倒れずに、宮本の攻撃に耐え抜く。
八木橋の左耳からは出血 鼓膜が破れたか
最終5回のラスト30秒は、両者打ち合い。
判定は、49-47,48-47,48-47の3-0で山上の判定勝利
第7試合 ライト級5回戦 ○池田俊輔(2回1分40秒TKO)天野琢磨●
青コーナーは、角海老宝石勝又ジムの池田俊輔(6勝6KO5敗1分、26歳)
この「修羅の世界」でもまれてきた叩き上げのプロボクサーだ。
赤コーナーは、新日本木村ジム、天野琢磨。24歳
トップアマのエリートだ。
アマ戦績38戦23勝11KO15敗
アマチュアからいきなりのプロデビューが6回戦。
しかも、B級トーナメント予選である。
1回、いかにもアマトップクラスらしく、左のジャブを切らさず、足を使って、距離をとる天野。
池田は時おり、振りの大きいパンチを打ち込むが、当たらず。
1回は、左ジャブの手数をとって、天野のラウンドか。
そして、2回
1回と変わらず、左ジャブを突き続ける天野
しかし、池田は、この左に合わせて、大胆に、大きく踏み込み、そのまま、大振りの右フック。
アマチュアボクシングでは、ありえない、力任せの、殺意のこもったこの大振りの一撃・・・・・
これが、まともに、天野のアゴをとらえる。
そのまま、キャンバスに、後頭部から叩きつけられる天野。
天野は、ぴくりとも動けず、レフェリーは即座にストップ
2回1分40秒、池田がTKO勝利を収めた。
天野はそのまま担架にかつがれて退場。
「リング禍発生」とさえ思わせた戦慄のKO劇
(28日現在、天野選手の状態は良好。ご安心下さい)
足を使って、左ジャブを切らさないポイントを稼ぐことを最重視する「アマチュア式のボクシング」で、試合をリードしていた天野が初めて浴びた「プロ」の洗礼。
相手選手をキャンバスに沈めて、その人生を潰す、そのために拳を振るう・・・・・・・
けれんみに溢れた荒々しい「プロのボクシング」の前に、「天野のボクシング」は無惨に蹂躪(じゅうりん)された。
プロボクシングは、勝ち負けを競う単なるスポーツではなく、人生の奪い合いである、という。
それほどまでに、1勝は大きく、1敗は重い。
この日、空席が目立つここ後楽園ホールで・・・
6人のボクサーが夢に向けて前進し、6人のボクサーがその踏み台になった。
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