基樹敗れて坂田勝つ 協栄世界ランカー明暗くっきり(7.17後楽園ホール) |
主催協栄ジムのこの興行で、まさかの大番狂わせ
WBAスーパーライト級9位に位置する世界ランカー
元日本スーパーライト級チャンピオン
佐々木基樹が、敗れてしまう大波乱
金星をあげた選手は、ヨネクラジムの飯田幸司
この男、日本ランカーでさえない27歳
戦績は10勝3KO4敗1分
しかも、本来の階級は佐々木選手より一階級下のライト級だ
勝利が告げられ、飯田の顔はくしゃくしゃ ヨネクラジム米倉会長の目には涙
一方、佐々木選手は、下を向いたまま、しばらく、一点を凝視
「佐々木基樹に失望しました」
試合後の敗者の弁
「もう、終わりです」
とも・・・・・・・
佐々木選手の試合はセミファイナルに組まれていた。
まず、青コーナー飯田選手が入場
入場のテーマ曲は、「スクールウオーズ」
次に赤コーナー、基樹応援団の林立する幟(のぼり)の間から、佐々木選手入場
曲は、「スターウオーズ」の「ダースベイダー」のテーマ
いやが上にも「格」の違いを意識させられる
ところが、サウンド機器のトラブルか
佐々木選手がリングインする前に、この曲が終わってしまう
なんだかいやな予感・・・
ここで「ボクレポ」と佐々木選手の立ち位置について一言
実は、管理人は、佐々木選手のファンである。
ファンになったきっかけは、彼のホームページ
こういう文章を綴る人間そのものに、興味を持った
「試合」ではなく、「文章」を通して、ファンになった唯一のボクサーだ。
このホームページの「ボクサー日記」を読めば分かるのだが
この日の飯田戦を前に、コンディションの不良が伝えられていた。
そもそも佐々木選手にとっては、勝ってもほとんどメリットが無いこのマッチメイク
自然に低下していくモチベーションを無理に引き上げようとして、かなりストレスがたまって
いる様子も感じられ、ファンとして、とても、心配になっていた。
そこに、「ダースベイダー」の曲の不自然な終わりかた。
表情も、なんとなくいつもの覇気が感じられない。
それに比べて、飯田選手は闘志満々
コールされるや、上に突きたてた腕を、佐々木選手の方に向けて、「シュート(撃ってやる)」
ポーズ(ゲッツ、ポーズ?)の挑発をしてみせる
立ち上がりは悪くなかった
1回 佐々木選手は、さすがは、世界ランカーと思わせる重く切れのある左ジャブで先制
2回 左右のフック、強烈な左ボディアッパー
やはり、一階級下の、しかもノーランカーの飯田選手とは、パンチの重みが違う
中盤までにはKOも、と思ったのだが、3回 なぜか、佐々木選手の手数が減ってしまう。
とても、体が重そうで、なぜか手が出ない
飯田選手は、ガードを固めて前に
「開き直り」「死に者狂い」で捨て身の反撃
単発ながら、思い切った踏み込みから、アッパーを振り回す場面も
佐々木選手を前にして、踏み込むだけでも勇気がいるが、その上、カウンターをもらいやす
いアッパーを打ってくる飯田選手
佐々木選手を全く恐れていない証拠だ
ただし、パンチに迫力はない
この日の飯田選手が良かった点は、ガードだ
グローブをしっかり上げて、エルボーで、ボディも覆う固いガードで、半身に構え、佐々木
選手のパンチをブロックする
この日の佐々木選手、本来のスピードが感じられない上、動き方にもちぐはぐな点があった
たとえば、ジャブを突いたあと、「左」ではなく、「右」に回ってしまう動き
右に回ると、ジャブに、相手が右を合わせた時に、返しの「右」が遠くなってしまう。
よって、相手の右には、打ち返さず、下がるよりない展開になりがちに・・・
逆に、ジャブを打って、「左」に回れば、相手がパンチを合わせて来ても、「右」を近い距離で
打ち込める
もちろん、考えがあって、「右」に回ったのだろうが、その狙いが見えない
飯田選手は圧力をかけて前に
佐々木選手が、右回りであることにも助けられてか、距離を詰めてのボディが入る
5回以降、佐々木選手の口が開き気味に 呼吸が苦しそう
スタミナ失速を思わせる兆候
5、6、7回と、一進一退のもみ合い
ただし、7回ラスト30秒、佐々木選手 左ボディアッパーからの右フックがクリーンヒット
これは、かなり効いた様子で、飯田選手の足が止まる
そして8回
明らかに、佐々木選手は勝負に出た
ゴングが鳴るやリング中央に素早く進み、飯田選手をにらみつけて、怒涛のラッシュ
ところが、飯田選手は、固いガードと、耐久力で、このラッシュをしのいでしまう
スタミナ失速の兆候が明らかな中、あえて、勝負に行って、倒しきれなかったのは、
あまりにも痛い
私の採点では3ポイント差で、佐々木リード
ポイント的には、佐々木選手がいまだ優位にあると思えるが
試合の流れという面では、この時点で、雲行きが怪しくなる
案の定、不安が的中
9回 10回 佐々木選手は、完全にスタミナ切れ パンチに威力はなくても、前に出て、
手数を繰り出す飯田選手が優位に
試合終了
私の採点では1ポイント差で、佐々木だが、9回、10回の印象が悪い。
正式なジャッジの判定は、1名が96-95で佐々木を支持
しかし、残り2名が、97-96 96-95で、飯田支持
2-1の判定で、飯田選手が勝つ
下を向いて、一点を凝視したまま、立ち尽くす佐々木基樹・・・・・・・
敗因は明白
スタミナだ。
ボクサーとしての総合能力は、はるかに佐々木選手のほうが上のはず。
しかし、この日の飯田選手が、唯一、上回っていたもの・・・・・
それが、「スタミナ」だった。
飯田選手は、しぶとく、ねちっこく、打たれても、前に出た。
クリーンヒットは少なくても、とにかく、手を出し続けた。
佐々木選手は、飯田選手の粘りの前に、根負けし、自滅してしまった印象だ
早くも3回あたりから、スタミナが失速しはじめ、いつもより動きが鈍く、手数を欠いた。
それでも、佐々木選手のパンチは強く、特に左ボディアッパーはかなり効いたはずだ。
だが、この日の飯田選手は固いガードで、対抗
耐え続け、バランスを崩す場面がありながらも、前に出て、佐々木選手に食らいついた
佐々木選手は、「格」を見せ付けて、圧倒的な力の差を印象付けて、試合を終わらせよう
とする気持ちが強すぎて、振りが大きくなり「狙いすぎて」手数が減ってしまった。
具体的には、佐々木選手は、「右のオーバーハンド」にこだわりすぎていたように思う。
「右オーバーハンド」
佐々木選手のファンにとって、思い出深いブロー
佐々木選手を象徴するブローでもある。
全日本新人王戦を1回KOで制した一撃も、この右オーバーハンド
「最強」の呼び声が高かった日本王者湯場忠志選手をキャンバスに這わせたパンチも
「絶対王者」木村選手を苦しめたパンチも
このフック気味に、繰り出される右オーバーハンドだ。
この日の佐々木選手、特に、中盤から後半にかけて、この「ブロー」を何回も繰り出していた。
しかし、的中率は悪く、飯田選手が常に距離を詰めてくる状態で、強引に繰り出されるため
腕がからまり、あるいは腕を抱えられて、クリンチのもみあいにつながり、スタミナの消耗を
早めてしまった
そもそも、このパンチ サウスポーに対して、中間距離で、左に対するカウンターとして
放たれる場合に、もっとも当りやすく威力を発揮するものだと思う。
現に、湯場も、木村もサウスポーだ。
ところが、飯田選手は、オーソドックス さらに常に距離を詰めようとする上、ガードが固く
パンチは小さくても、数を繰り出す、といった戦い方。
佐々木選手の「右オーバーハンド」は、カウンターとしても決まりにくく、かえって、打ち終わり、中に入られて、ボディに細かいパンチを入れられるきっかけを与えてしまっていた。
地味に見えるかもしれないが、単純に、詰めてくる飯田選手に、ショートのボディアッパー
をまとめ、機会を見て、上に返してみる、といったやり方をとれなかったのか、と思う
佐々木選手のパンチ力は、明らかに、飯田選手より上
見栄えは良くなかったかもしれないが、何発か入っていた佐々木選手の左ボディアッパー
は、かなりのダメージを与えていたと思うし、打たれた後、ダメージから、プレスが弱まり、
飯田選手の足が止まる場面が何度もあった。
「一撃の右オーバーハンド」で豪快に倒すより、「小さいボディブロー」を確実に積み重ねて
ダメージを与えて、相手を弱らせることを、第一に考えるべきだったと思う。
不器用だが、愚直に、前に出て、「捨て身」で手数を振るい続け大金星をあげた飯田選手
愚直なまでに、しつこく前に出るその戦いぶりは、まるで
私にとっての佐々木選手の「ベストマッチ」対木村登勇戦を思い起こさせた。
2005年3月5日 日本タイトルマッチの場で、王者木村に挑んだ佐々木は
1回にダウンを奪われながら、決してあきらめず、前に出て、食らいつき、今一歩の
ところまで、木村登勇を追い詰めた。
皮肉にも、あの試合の佐々木選手の「魂」が、対戦相手飯田選手に乗り移ったかの
ように思えた。
今後の去就が注目される佐々木選手
選手に夢を託すのは、ファンとして当然だが、選手とて、生身の人間。
万能の機械ではない。
戦績33戦26勝16KO6敗1分
彼は、生身の人間でありながら、33回、命を賭けて、リングに身を置き、精一杯、戦って、
記憶に深く刻まれる数々の名勝負を繰り広げた。
同時に、33回の激闘の代償として、想像を超えるダメージが肉体に深く刻まれているはずだ。
やめるか、続けるか
結果はどうあれ、ファンなら、「ボクサー基樹」へのリスペクトを忘れずに、「人間・基樹」として
の本人の決断を、尊重し、あたたかく受け入れるべきと思う。
この日の興行は全7試合
第1試合 ライト級4回戦 ○ジェームス村重(1回2分44秒KO)鳥飼祥平●
両者デビュー戦
ヨシヒロジムのジェームス村重(21歳)が、協栄ジム、サウスポーの鳥飼祥平(22歳)に、
KO勝ち
序盤から、サウスポー鳥飼のペースだったが、一発の、ダイレクトの右ストレートで
ジェームス村重のKO勝ち
勝った村重は感極まってか、涙・・・涙・・・・
第2試合 スーパーフェザー級4回戦 ○橋本英明(3-0判定)有馬啓祐●
両者、サウスポー対決となったこの一戦
東拳ジムの橋本(2勝3敗、22歳)が、3-0の判定(40-37 40-37 40-36)で、協栄ジム
デビュー戦の有馬(23歳)を下す。
試合経験からくる自信からか、橋本は落ち着いた試合運び
相手の動きをよく見て、手数で優位に
ややアゴがあがり気味だが、有馬は、デビュー戦の緊張もあってか、最後まで手が出ない。
3-0の判定で橋本の勝ち
第3試合 フェザー級4回戦 △城座治隆(三者三様ドロー)年見口尊司△
協栄ジムの城座選手(1勝1ko2敗、27歳)と、FIジムの年見口選手(1勝、22歳)の一戦は
三者三様のドロー
筋肉質のがっしりした体格の城座選手は、かなりパンチがありそう。
1回は手数、有効打で城座が優位に
年見口選手は、長身の右ボクサータイプ
今年4月の大橋ジム主催興行でデビュー、興行の主催者大橋ジムの井上祐選手を相手に
初勝利をあげている
いまだ2戦目ながら、冷静沈着な年見口選手
城座選手に詰められながらも、あわてずに足を使って、距離をとり、一転、左のダブル
左フックテンプルから、左ボディアッパー、あるいは、逆に、「下から上に」返す
コンビネーションが冴えて、城座選手を苦しめ、2回は年見口選手が優位に
3回は、逆に、城座選手が攻勢 迫力あるパンチを打ち込み、年見口選手、効いている様子
最終4回 打ち疲れか、口が開き気味の城座選手
どうも、城座選手は、マッスル系のボクサーにありがちな「瞬発力」には恵まれていても
「持久力」にはやや問題があるタイプのよう
年見口選手は冷静に、城座選手の動きを見て、入ってくる城座選手にアッパー、フックを
ヒットさせる
判定は、39-38 38-39 38-38 三者三様のドロー
城座選手の課題は、スタミナ
年見口選手は、左の使い方は、巧みで素晴らしいが、右がオープン気味
フック、アッパー系のパンチはよいが、ストレート系のパンチが苦手のよう。
内側からまっすぐではなく、外側からフック気味に打ち込まれる印象
また、やや上体が立ってしまっているというか、固い感じ
攻防両面で、もっと、頭を振ったり、上体を振るとよいと思う
第4試合 スーパーバンタム級8回戦 ○斎藤憲一(3-0判定)児島芳生●
協栄ジムのサウスポー、斎藤選手(7勝2敗、27歳)が、明石ジムの児島選手(7勝3KO
6敗2分、25歳)に、3-0の判定勝利(78-76 79-76 79-75)
1回から最終8回まで、プレスをかける児島選手を、さばきつつ、斎藤選手が有効打を
積み重ね、ポイントリードを広げていくという展開
頭を振っての児島選手の前進に後退しつつも、斎藤選手は的確な有効打を繰り出す。
ロープに詰められると、回り込み、立ち位置を変えて、再び攻撃
1回から一貫して、斎藤選手のパンチを被弾しつつも、児島選手は下がらずに前へ
この根性はたいしたもの
しかし、「前へ」といっても、鋭い踏み込みから、前に、という形ではなく、べた足で、
じわじわと前に出る児島選手
追い足に欠けてしまい、これでは、、スピードにまさる斎藤選手をとらえることはできない。
今まで、一度もKOで勝ったことがない、という斎藤選手
児島選手の頑張りもあり、この試合もKOでは勝てず、判定勝ちに
第5試合スーパーバンタム級10回戦 ○瀬藤幹人(6回2分53秒TKO)竹下隆●
帝拳ジムの下田選手を激闘の末に判定で破り、日本ランカーとなった協栄ジムの瀬藤選手
(日本スーパーバンタム級5位、18勝8KO6敗1分、26歳)が、角海老宝石ジムの竹下選
手(11勝2KO9敗、27歳)に、6回TKO勝ち
瀬藤は、身体能力を生かしたノーガード戦法
左ジャブを打ちつつ、左に回り、タイミングをつかむや、右ストレートをフォロー
中に入る竹下に、巧みにアッパーを合わせたり、ノーモーションの右ショート
打っては動き、詰められて、距離をつぶされるとクリンチに出る
パンチはかなりの威力
4回には、右ストレートで、竹下のひざが揺れ、5回ラスト30秒には、瀬藤自身が嫌がって
た近距離でのパンチの交換に出て、ダウン寸前のダメージを与える。
そして、6回にTKOへ
ただ、どうもよくわからなかったことがひとつ。
なぜ「ノーガード」でなければならないのか、ということだ。
その必然性、納得できる理由、が最後まで見えてこなかった。
「パンチをもらうリスク」については、言うまでもないが、それより心配なのは「バッティング」
頭から、というより、頭ごと、前に詰めてくるタイプの選手と戦う場合、ノーガードは明らかに
リスクが高い
また、手をだらりと下げたノーガードだと、パンチの打ち出しの動作、パンチの軌道が、
相手に見えやすくなってしまう面もある。
現に、竹下選手が詰めてくると、嫌がって、クリンチに出るのは、「ノーガード」だからだと
思う。
今回は勝てたものの、実力がさらに高いレベルの相手と戦う場合、クリンチに出る行為は
相手側の攻勢ポイントにつながりやすく、判定で不利になる。
インファイトで打ち負けないためにも、基本通り、ガードはしっかり上げておくべきと思う。
また、くどいようだが一言
現在のスーパーバンタム王者は、白井・具志堅ジムの山中選手
協栄ジムサイドの具志堅ジムとの「絶縁宣言」が撤回されない限り、瀬藤選手は、山中選手
に挑戦できなくなってしまう。
こんなばかげた話しはない。
本当に所属選手や、ボクシング業界を愛する気持ちがあるなら、私憤は捨てて「絶縁宣言」
は撤回すべきと思うのだが・・・・
第7試合 51.5キロ契約10回戦○坂田健史(5回1分38秒KO)ベーキーソック●
協栄ジムの世界ランカー WBAフライ級3位 坂田選手(27勝12KO3敗1分、26歳)が、
韓国フライ級3位、ベーキーソック(5勝3KO1分、19歳)に5回KO勝ち
相手との実力差があったとはいえ、坂田選手のボクシングは完璧
頭を振る ガードを上げる コンビネーションで打つ といった基本もしっかり
圧力のかけ方 カウンターのとりかた も巧み
全く息も上がっておらず、スタミナも完璧
坂田健在を印象付けた。
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