「未来の世界チャンプ」天才・小堀、日本王座V2!(11.4角海老興行パート1) |
第394回ダイナミックグローブ
主催 角海老宝石ジム
セミファイナルの日本スーパーフェザー級タイトルマッチ
王者 小堀佑介 角海老宝石ジム所属 25歳
WBC世界スーパーフェザー級13位
戦績 20戦17勝9KO2敗1分け
挑戦者 三上朗央 帝拳ジム所属 29歳
日本スーパーフェザー級1位
戦績 20戦18勝6KO1敗1分け
三上は、国体ベストエイトにも輝いたアマチュアエリート
名門、帝拳ジムに入り、昨年度A級トーナメントを制す
アップライトのアマチュアスタイルから、切れない手数と尽きないスタミナが武器
左の一発の力より、むしろ右のリードの手数にすぐれた右利きのサウスポー
この二人、そもそもは、9月16日に対戦することに
しかし、防衛戦に向けて、茨城県水戸市で行われたキャンプ
王者、小堀がランニング中、左肩を脱臼
応急処置をした上で、しばらく左肩の様子をみていた小堀陣営だが、負傷箇所の経過は不良
9月16日に予定されていた防衛戦は、11月4日に延期されることになった
ファンレター
実は「ボクレポ」と王者、小堀選手とは、多少の付き合いがある
きっかけは、今年5月6日
「限界を超えた死闘」となったイーグル京和対ロデル・マヨールのWBCミニマム級選手権
そのアンダーカードで行われた日本スーパーフェザー級タイトルマッチ
王者小堀佑介 対 挑戦者藤田和典 の一戦だ
この日の興行については 過去記事 あります
メインイベントが世界戦
それも、試合後、両選手が病院送りになる日本ボクシング史に残る名勝負
そのアンダーカードで組まれた一戦だけに、注目度は低かった
しかし、「ボクレポ」はこの一戦に、強烈な衝撃を受けた
一切の力みがないしなやかで、やわらかく、それでいて、振り絞った弓矢のように、強力に
目標を打ち抜くフォーム
優れたハンドスピード 上下、内外に打ち分けられた正確なコンビネーション
ほとんどクリーンヒットを許さない防御技術
徹底的に、自分の有利な距離で戦い抜く戦略を冷徹に貫く鉄の意志
「無心」と形容するしかない集中力が高まりきって、トランス状態に入っているかのような
没我の表情
王者、小堀は、一切の邪心、気負いもなく、流れる水のように、淡々と「自分のボクシング」
挑戦者、藤田は、小堀のクリーンヒットの蓄積に耐え切れず、ついにキャンバスに。
藤田は今まで、一度としてダウンを奪われた事がなかった
あのフィリピンの「石の拳」世界ランカーのランディ・スイコでさえダウンを奪えなかった
その藤田を、力みのない、自然体のボクシングで、やすやすと倒してしまった
恵まれた素質をもったボクサーであるとは、思っていたし、真鍋圭太と、2006年1月に
行われた日本スーパーフェザー級王座決定戦のKO劇も素晴らしい内容
ただ、私にとっては、この藤田選手との初防衛戦のインパクトの方が強かった
「小堀は、急速に強くなっているな」
「あんなボクシングができれば、試合やってて、楽しくて仕方ないだろう」
世界王者に登り詰める前、スカパーのスカイA放送で、長谷川穂積という名のOPBFバンタム
級王者(当時)をはじめてみたとき以来の心地よい興奮
そこで、矢も盾もたまらず、本人に手紙を書いた。
いわゆるファンレター、というものになるのだろうが、このようなものを書くのはこのときが
初めて。
「この世に生を受けた以上、いずれ人は死ぬ、死ねば土くれだ」
「人は死という不治の病に平等におかされている、時々刻々と死は近づいている」
「であればこそ、残された人生を燃焼しつくそう」
「ボクシングを天職と考えるなら、本気で世界を目指そう」
「その可能性が、君にはある」
こんな思いをぶつけてみた
「ボクシングの天才」
小堀選手は一言でいって、「天才」タイプ
「ボクシングの天才」だ
モーツアルト然り
ニュートン然り
アインシュタイン然り
天才といわれる人たちは、その分野に能力が集中しすぎている結果、普通の人の常識
では測れない特殊な性格、感性、を持ち、常識外の行動をとる
「大きな子供」であり、「変人(偏人)」であり、「自信家」
「天才」の特徴
そして、それはそのまま、小堀選手にあてはまると思う
彼は、実際、「大きな子供」のように、天然で、「変人(偏人)」で、「自信家」だ
「天才とは、大きな子供である」
ボクシングという一点にのみ、本人の能力が集中している結果、その他の分野では子供
同然
天然(てんねん)そのもの
「大きな子供」といった感じ
たとえば、例の勝利者インタビュー
緊張で、あがってしまって、心臓バクバク、頭が真っ白に
何をしゃべったのか、全くおぼえていないという
「イヤなので、勝ってもインタビューは拒否します」とまでいっていたこともある
ところが、気が小さくて、臆病なのか、というと、ボクシングの試合では全く違う
むしろ、気が強すぎるくらいのファイタータイプ
常に落ち着いて、頭脳を働かせて、展開を読み、試合の流れを作り、ペースを握る
「決め」にいく場面では、何の恐怖心もなく、大胆に前に踏み込み、体重を乗せた思い切り
のよい連打を振るう
「カウンターをもらったら、どうしよう」といった恐怖心は微塵も感じられない
「天才とは変人(偏人)である」
小堀選手は、どう考えても「変人(偏人)」だ
変わっていて、偏っている
天才であることの明白な証拠
たとえば、遅刻の常習犯
また、表彰式などの大事な場でも、すぐにどこかにいなくなってしまう
「小堀選手、小堀選手、至急、リングサイドまで来てください」
こんなアナウンスを聞いたのは、一度や二度ではない
面白い変わったエピソードがいっぱいある
たとえば「高い席」事件
「一番高い席のチケットを3枚とっといて」
こんな注文に
「わかりました!!」
と、小堀選手
後日、用意されたチケットを見て絶句
安い上に、南の奥の奥のとても見にくい席なのだ
あれれ、と思って、いろいろ聞いて、ようやくわかった
小堀選手、「一番高い席」を価格でなく、一番高い位置と勘違いしてしまったのだ
あきれていると「あははは」と自分の勘違いに受けて、大笑いしている
こちらも笑うしかない^^
「一時間事件」
写真をとろうということになったが、もじもじしている小堀選手
どうしたのか、と聞くと
「写真は恥ずかしくて苦手なんです。一枚とるのにいつも一時間かかります」
一時間ってことはないだろっ^^
「日焼けサロン事件」
あまりに色白なので、ファンアピールも考えて、日焼けサロンにいったらどうか、という勧めに
「恥ずかしいです。誰かと一緒じゃないと一人では恥ずかしくていけません」
人前で、トランクス一丁で、半裸はOKで、なんで日サロ、が恥ずかしいのか?
ここからもう、よくわからないのだが、仕方がないので
「だったら、いっしょにいってあげるよ、ただし玄関までね」
「はい」
「はい」じゃねーだろっ^^
なんかちがうだろって^^
また、小堀選手、とにかく怒らない、泣かない
何年もいっしょにいるジムの仲間も、彼が怒っている姿をみたことはないし、泣き顔も見た
ことはない、という
ボクシングも格闘技だ
毎日、怒って、毎日泣いて
激情家で血の気が多い若者が集まっているのがボクシングジム
ところが小堀選手、まだ25歳の青年でありながら、一度も怒らない、泣かないという
これもまた、変人(偏人)の証拠
「天才とは自信家である」
万事、控えめで、シャイな小堀選手
しかし、自分のボクシングの才能については、並々ならぬ自信を持っているようだ
「自分にはボクシングしかありませんから」
彼が口癖のように、いう言葉だ
「自分にはボクシングしかありませんから」
ボクシングをとったら、何も残らない人間
だからこそ、ことボクシングについては、誰にも負けられない
そして、実は誰よりも自信がある(推測・・・・)
だからこそ、死にもの狂いで練習し、試合では、研ぎ澄まされた集中力で相手を倒す
「ボクシングの天才」小堀佑介選手の2度目の防衛戦
左肩脱臼のため、準備期間も一ヶ月しかなかった、という小堀選手
果たして、三上選手を倒して、王座を防衛し、世界ランクをさらに上げるのか
それとも、調整不足もたたって、一敗地にまみれるのか
不出来な一戦
結果については、10回47秒 三上選手の偶然のバッティングによる傷口の悪化が、試合
続行不可能、と判断されての負傷判定
96-95 98-94 98-92 3-0で、小堀選手の勝利となった
同級1位、最強の挑戦者を迎えての一戦に、大差の判定勝利
2度目の防衛に成功
しかし、この試合、内容的には「不出来」の一言
本来の小堀選手のボクシングが、まったく出来ていなかった
日本王者のボクシングではあっても、世界ランカーのボクシングではない
小堀選手の標的はあくまでも、会場に観戦に来ていたWBA王者エドウイン・バレロ
あるいは、WBC王者、マルコ・アントニオ・バレラでなければならない
志は、あくまで高く、だ
「トレーナーからも、ダメ出しされてしまいました」
戦いを振り返る王者の言葉
観戦しながら、どうしたのか?と首をかしげざるを得ない場面が多々あった
以下、挙げてみると・・・・・
藤田戦、真鍋戦と異なり、コンビネーションで打てていない
パンチとパンチのつなぎが雑で、単発傾向
一発頼みの力みかえった大振り、アウトサイドからのパンチが多い
上下の打ち分け 内外(うちそと)の打ち分け、がほとんどできていない
まるで、別人が戦っているような印象
「序盤にもうひとつ、タイミングが合えば、倒せたパンチがあった。
そこで、ついつい、力んで、一発で倒そうとしてしまった」
王者の言葉
特に、異常を感じたのが、左フックを中心とした「左」のパンチ
左フックを多用していた小堀選手の狙いは明らか
三上選手はサウスポー
アマチュア出身者らしく、アップライト、腰高の構えで、普段から右のガードは下がっている
左を打ち出す際に、右のガードが特に下がる
三上選手の「左」に合わせて、サウスポーにとっては死角となりがちな「左フック」を合わせ
ようというわけだ
しかし、肝心の左フックに本来の威力、切れ、スピードがない
明らかに、ダウンのタイミングで、左フックが三上選手の急所に命中しているにも関わらず、
ダメージを与えられない
「脱臼の影響かもしれませんが、当て際に、ナックルが返っていなかった。オープンブロー
気味になってしまって、効かせるパンチにならなかった」
王者の弁
左フックを打つフォームもメチャクチャ
後半に、特に顕著なのだが、打ち終わりに左腕の引きが遅く、また引いた腕がだらりと
下がってしまう
左のパンチが大きく「流れて」上体がつっこんでしまって、スムーズな右の返しに
つなげられない
「練習不足、調整不足で、左腕の筋肉が回復していない状態でした」
脱臼から復帰して以降の調整期間は、わずかに1ヶ月
やはり、短すぎたのか
「ビデオで見て、自分の体が本来より小さく感じた」
とも
さらに、三上選手のパンチをもらう場面があまりにも多すぎた
「一発も打たれずに試合を終わらせる」
「打たさずに、打つ」
世界をとる、というなら、これこそが、小堀選手の目指すべきボクシング
ところが、この試合では、危ないタイミングで、パンチをもらう場面が多すぎた
2回1分半過ぎの、三上の左ストレート
5回 2分半過ぎのショートレンジで打ち込まれた三上の左アッパー
小堀選手のアゴが大きくはねあげられている
もしも、相手がバレロか、バレラだったら、この一発で試合は終わっている
7回 1分過ぎの三上の左ストレート、右フック
ひざがゆれ、ぐらつかされる
攻撃のバランスがメチャクチャなので、打ち終わり、に隙が生まれやすく、カウンターを
とられる心配がないので、三上選手は安心して前に出られる
「効いたパンチはなかった」という小堀選手
しかし、96-95と一ポイントしか差をつけなかったジャッジがいたという事実は、やはり
重く受け止めるべきではないだろうか
小堀ラッシュ
ここまで、小堀選手の良くない点ばかりをあげてきた
では、この試合、負けていたのかといえば、そんなことはない
小堀選手に、意識的にかなり辛めにつけた私の採点でも97-93
4ポイント差で勝っている
ちなみに、2回、5回、7回を三上、その他の回を小堀に振った
あえて、10-10はつけなかった
本来の調子にほど遠かったが、天才・小堀選手らしい「クレバー」な戦い方
で、ポイントを獲得していた
ひとつは「小堀ラッシュ」ともいうべき、見た目が派手で、ジャッジに攻勢を印象付ける
神風特攻隊的な?連続攻撃だ
この「小堀ラッシュ」、決まって回の後半、ラスト30秒から10秒に繰り出される
繰り出されたラウンドは、2回 4回 5回 6回 7回 8回
場内は大きく湧き、カウンターを恐れずに勇気をもって踏み込んでくる小堀選手の
圧力に、三上選手は押され気味に
「ポイントをとれていないかな、と思った場面は、意識してやりました」
と小堀選手
ゴング直後、右腕をあげて、アピールするしぐさも、「意識」しての行動という
この小掘ラッシュ、では誰でもできるのか、といえばそんなことはない
カウンターをもらうリスクを恐れずに、強い踏み込みで前に出て、パンチをふるう
これはよほどの勇気と集中力がないとできないことだ
「いくべきところ、でいけない」選手がほとんどといってよいだろう
しかし、小堀選手は、数少ない「いくべきところ、でいける」選手だ
二つ目は、小堀選手の「右」のパンチ
これは、ケガの影響もなく、三上選手を確実に苦しめた
3回1分過ぎの右ストレート
4回1分50秒過ぎの右ストレート
最終10回、試合を終わらせた右ストレートは命中した瞬間、三上選手の目の傷が開き、
血しぶきが飛んだ
この右、実は下を見ながら、打ち込まれている
いわゆる「目のフェイント」
レフェリー阿部は、即座に試合をストップ
ドクターチェックのあと、いったんは、TKOのサインが
小堀選手の有効なヒッティングによる負傷TKOだ
しかし、三上選手が所属する帝拳ジムサイドが猛抗議
ヒッティングではなく7回に負ったバッティングによる傷が悪化した、という解釈で、負傷判定
に持ち込まれた
それでも結果はそれぞれ、1,4,6ポイント差の3-0で小堀の勝ち
また、小堀選手のベストラウンドは6回だと思う
この回、はじめて、下を打った
右の上下に打ち分けるダブルが三上選手を苦しめた
9回には、左フックのフェイントをきかせて、いきなりの右アッパーを打ち込んでみせた
この試合、アッパーを打つのは、はじめてだったのではないだろうか
勝者 小堀が告げられるや場内は沸騰
恒例の勝利者インタビューとなった
―それでは、2度目の防衛に成功しましたチャンピオンの小堀佑介選手です。
おめでとうございます。
「ありがとうございます。あ・・・あ・・・」
―序盤から激しい打ち合いになりました
「はい、激しかったです。はい・・・・あ・・はい」
―どんな気持ちで、リングにのぼりましたか
「いや、もう・・・ふつうで・・・ふつ・・・いつも通りで・・・はい」
―そして、小堀さん、しっかりとベルトを守りました
「はい・・・よかったです・・・はい・・はい・・よかったです」
―たくさんの応援も聞かれましたが、そのあたりも心強かったのではないですか
「はい、ほんと、いつもありがとうございます・・・・・あ・・・・ありがとうございます・・・はい」
―このインタビューは試合よりも緊張するといわれていますが
「試合より、いやです。ほんと・・・いやです・・・もう、勘弁してください・・・・はい」
―2度目の防衛に成功しました。今後の目標を聞かせてください
「また、地道に、一試合、一試合、やっていきます・・・はい・・・応援よろしくおねがいします」
にこやかな雰囲気に包まれる場内
「かっこいい、佑介」
という黄色い声も
母性本能をくすぐるのか、意外に?女性ファンが多い印象
自然発生的な「小堀」コールも起こり、潜在的なファンは多く、好感度も高いようだ
ただし、場内にほかの選手の垂れ幕はあるのに、小堀選手のそれはない
なんともさびしい
本人のシャイな性格も災いしているのかもしれないが、そろそろ後援会かファンクラブ
を作るべき時期にきているのではないだろうか
このネット時代に、ホームページもブログもないというのも問題だ
HPやブログができたら、ぜひとも目を通していただいて小堀選手に関心をもっていただけ
れば、と思います
その上で、後援会なりファンクラブがもしもできたら、応援していただければ幸いです。
「自分にはボクシングしかありません」
ボクシング馬鹿一代
だが、馬鹿と天才、紙一重
WBC世界スーパーフェザー級13位、、天才・小堀選手の今後にさらに期待!
頑張れ!小堀!
(11.4角海老興行の他の試合の模様は後編にアップします)
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