おかえりなさい!佐々木基樹、復活宣言 (2.19後楽園ホール) |
第338回ガッツファイティング
今度こそ、ただいま。by佐々木基樹
何と言っても見どころは、メイン
当日深夜地上波TBSでも放送された佐々木基樹選手の復帰戦だ
佐々木基樹 33戦25勝16KO7敗1引き分け 31才
元日本スーパーライト級チャンピオン
「天上天下唯我独尊」がモットー
佐々木選手といえば、このホームページ
「ボクサー日記」
文章も卓抜
また、内容の「濃密さ」という面でも、右に出るものはない
「世界ランカーにも勝つし、4回戦にも負ける」
佐々木自身が自分について、語った言葉だ
そのキャリアを見ると、佐々木は何人もの無敵とみなされていたボクサーを倒している
日高和彦(新日本木村ジム)を、A級トーナメントウエルター級決勝で下して優勝
(2000年10月20日)
あるいは、あの湯場忠志を9回TKOに下し、日本スーパーライト級タイトルを奪取
(2003年2月15日)
「絶対王者」木村登勇とのタイトルマッチでも、初回にダウンを奪われながら大善戦の惜敗
(2005年3月5日)
「強い」相手に対しては、とことん強い
これが、佐々木だ
反面、取りこぼしが多いことも事実
湯場を下したあと、下馬評では絶対的に有利だった江口慎吾(大橋ジム)に5回TKO負け
(2003年5月19日)
インドネシアの世界ランカー、バハリを破って、世界ランクに入った直後の、ノーランカー
山岡靖昌(広島三栄ジム)にドロー(2006年3月20日)
続く一階級下の飯田幸司(ヨネクラジム)に敗北(2006年7月17日)
飯田との敗戦では、引退を覚悟するところまで追い込まれた
佐々木本人には不本意かもしれないが、この「浮き沈み」の激しさが彼の魅力
「佐々木なら、何か予想も出来ないことをやってくれる」
そんな期待を持って、見続けることが出来る数少ないボクサーの一人だ
どん底からの復帰戦となる今回の試合
佐々木の対戦相手は、アスウイン・カブイ
インドネシアウエルター級王者、OPBFウエルター級4位 22勝6KO5敗
アマチュアで80戦以上の戦績を誇る
「かませ」ではない本格的な実力者を復帰戦の相手に選んだ佐々木
この試合の敗戦は、今度こそ本当に「引退」を意味する
そこまでの覚悟で臨んだ一戦
入場曲に佐々木自身が選んだのは、ダニエル・パウダーの 「 Bad Day 」
「今日はひどい日だったから、君はまたちょっと落ち込んで
それを紛らわそうとして 悲しい歌を歌う
もう何もわからないよと
うそなんかつくなよ 僕に
君は本当の気持ちを隠して笑顔で働く 最低な日だったのに
でも思い出せるはずだよ
ずっと なにが好きだったのか どんな感じだったのか 前だけ向いてさ
最低な日だったけどね 最低な日だったね 」
佐々木選手の入場曲といえば、従来はスターウオーズ「ダースベイダー」のテーマ
ところが、それとは打って変わって、平井堅系のやさしい哀感の漂うメロディ
「俺が、今、一番、気に入っている」という理由で、この曲に決めたのだという
肩の力を抜いて、淡々と
「でも思い出せるはずだよ
ずっと なにが好きだったのか どんな感じだったのか 前だけ向いてさ 」
この一節を自分に言い聞かせるかのように
31歳の等身大のありのままの自分を信じて、ホールのリングに「ただいま」
この「ただいま」が今回の佐々木選手のキャッチフレーズ
「俺は、帰るべき場所に帰るんだ、本来、いるべき場所にいるんだ」(ボクサー日記より)
だから、「ただいま」
一方で、どうしようもない「不安」も抱えていたという
以下、「ボクサー日記」より引用
「俺が、戻ってもいいのかい? 俺は、まだやれるのかい?」
「引退を考えた時に生じた虚脱感、と言うよりはむしろ失った充実感。
「ボクサー」という心の勲章を失った時の無力感。」
「逃げなのか?」
「あるいはそうなのかもしれない。 自分が「ボクサー」でなくなることの恐怖。
それからの逃げだったのかもしれない」
「そうだったとしても、いい。正々堂々とリングに戻り、プロボクサーとしての能力が示せるの
であれば、誰も文句を言わない」
「俺は、もう一度ボクサーとして、輝きたい」
この試合は、148ポンド契約 スーパーウエルター級の10回戦
1回 佐々木は、いきなりの右オーバーハンド、右フック
あるいは、大胆なステップインからの左フック
しかし、距離が合わず、パンチは空転
サウスポー、カブイのコンパクトな左ストレートの前に、距離を詰められず、何発か被弾
ラスト10秒、カブイの左、打ち終わりにショートの右がヒット
1回は有効打、攻勢では互角だが、ペースはカブイ
私は、10-9でカブイに
2回30秒過ぎ カブイの左をかわした際に、ややバランスを崩した佐々木
そこに、さらに左を追い打ちされ、身体は、ロープにはね飛ばされる
その後もカブイの左が冴える
この左に突き放されて、中に入っていけない佐々木
「緊張した」ということもあったのか、どうにも動きが固い
この回も私は10-9でカブイ
3回 佐々木陣営セコンドは、「ボディ狙い」の指示
この回は、明らかに、下にパンチを散らす佐々木
しかし、カブイのディフェンステクニックはクリーンヒットを許さない
カブイの左ストレートで、佐々木、鼻血
しかし、1回、2回に比べると、微妙に流れが変化
佐々木選手が自分の有利な距離をつかみ、ペースメイクしつつある印象
私の採点は10-10
4回 スタート直後から、意を決したかのように、ぐいぐいと前に出て、プレスを
強める佐々木
詰めてのボディ打ちがカブイにヒット
さらに、左、打ち終わりに右ストレートから、返しの左フック
この回40秒過ぎ ショートの右が入り、ぐらつくカブイ
フェイントを利かせての、右ボディフックも冴える
ラスト30秒 佐々木、連打
カブイ、後退
スタート直後から、強引に距離を詰めて、踏み込んだ佐々木の強気の作戦が奏功
これで、完全に流れをつかんだ
5回 フェイントを入れてのボディに動きが止まるカブイ
かなり、効いている
そして、2分過ぎ 佐々木の右ボディストレートにぐらつくカブイ
左ボディから、左アッパー 外から内へのコンビネーション
さらに左ボディを入れて、カブイの左に、右をかぶせ、さらに右
カブイ、ダウン
テンカウント
5回2分44秒、佐々木基樹のKO勝ち
「ただいまー!」
マイクを向けられての第一声
「久々のリングは実にいいです、生きてる感じがします」
「自分はいくら落ちても、また起き上がるところに、強さがあると思っています」
「(2006年は)最悪の年でした。世界ランカーから、ノーランカーに転落」
「今年は反対に、ノーランカーからタイトルをとるところまで、飛躍の年にしたいと思います」
「これからも応援よろしくおねがいします!」
その表情からは、今までの佐々木選手にあった近寄りがたいほどに、ギラギラした
他人を寄せ付けない気負いが消えて
「ボクシングをやれることの喜び、楽しさ」
「自分のいるべき場所に戻れたことへの感謝、安心」
そんな思いが素直に伝わってくる笑顔に
こっけいなくらい威圧的な「ダースベイダー」から、淡々としたやさしい「ダニエル・パウダー」
へ
「基樹参上!」から「ただいま!」へ
さまざまな葛藤、悩みを経て、精神的に一段と大きくなって、帰って来た佐々木選手
今後の動向に大いに注目したい
おめでとう、佐々木選手! そして、「おかえりなさい」
セミと、セミセミは、ランカー対ノーランカーの激突
日本スーパーフェザー級6位、協栄ジムの松崎博保が、「元祖ヅラボクサー」「顔面凶器」
角海老宝石ジムの塩野翼と
日本スーパーライト級7位、相模原ヨネクラジムの中村徳人が、FIジムの小森光幸と拳を
交えた
第7試合 スーパーフェザー級8回戦 ○松崎博保(3-0判定)塩野翼●
日本スーパーフェザー級6位、協栄ジムの松崎博保(15勝8KO1敗)は、デビュー戦黒星
後、15連勝中
早稲田大学政治経済学部卒のエリートボクサーで、性格も真面目そのもの
ややアップライトに構えて、左ジャブを基本に、ワンツー、ワンツーフック、ボディにも打ち分け
る右ボクサーファイター
ハンドスピードはさほど早くはないが、一発一発をしっかりと打ち込むタイプ
一発一発、当て際にしっかりとナックルを握っているといった印象
一方の塩野は、担当の角海老ジム、田中チーフトレーナいわく「殺人鬼」のような顔面
大学はおろか高校さえ出ていない中卒の叩き上げ
モットーは「下克上」
昨年9月には、自身の引退を賭けて、あの「ヅラボクサー」小口(草加有沢ジム)と対戦
担当の角海老ジム、加藤トレーナーこそ、ヅラを会場に投げる「ヅラ投げパフォーマンス」
の元祖
また、無毛症で生まれつき全く毛が生えていない自分こそ真の「ヅラボクサー」
その自分達に、何のことわりもなく、「ヅラボクサー」を名乗るのはけしからん、という本業の
やっちゃんも、びっくりするようなインネンをつけて小口と対戦
試合は壮絶な打ち合いになり、塩野のただでさえ放送コードギリギリの顔面は鮮血にまみれ
小口も顔面血だらけに
しかも、塩野、血まみれになりながら、にやにやと笑うものだから、当日、リングサイドに陣
取っていた「ヅラボクサー」目当てのワイドショー関係のテレビスタッフ達が引きまくる
当然ながら、翌日のニュースでは、塩野の血まみれ映像は一切放送されず「お蔵入り」
勝敗は塩野の判定負け
( この塩野対小口の一戦は 過去記事 あります )
事前の約束通り、「引退」するのかと思ったら、前言撤回
しかも、このことについては一言の説明も弁解もないというアウトローぶり(大ボケぶり)
早大政経卒の生真面目な松崎とは好対照
ところが塩野、その凶暴な顔面とは裏腹に、同僚ボクサーの話では性格はおとなしく、気の
弱いところがあるというから驚き
礼儀正しく、挨拶もしっかりと行う「好青年」キャラでもある
そのギャップに惹かれるのか、女性ファンが、意外に多い
試合は、1回からていねいにジャブをつき、右オーバーハンド、左ボディで有効打を重ねる
松崎のペース
塩野は、手数不足 後手に回らされる
ところが、4回、偶然のバッティングで松崎が右目上をカット 流血
血を見るや、急に元気になった塩野
目に見えて、手数が増え、4回を優勢に
5回 6回とほぼ互角ながら、流れは塩野
6回を終えた時点で、私の採点は58-57で松崎
ところが7回 松崎が1回からていねいに、ボディを入れ続けていた効果か
流れをつかみつつあった塩野の動きが失速
松崎の右オーバーハンドが、カウンターで決まり、ぐらつく場面も
最終8回も松崎の攻勢が光る
勝敗は、判定に
私の採点は、78-75で松崎
公式のジャッジの採点は、79-76 78-75 78-77 3-0で、松崎の勝ち
「また、がんばりますのでよろしくおねがいします」
「今日は、ありがとうございました」
リング上から、涙目で頭を下げる松崎選手
松崎選手が苦戦した試合は、2006年8月2日
あの亀田興起対ランダエタのWBAライトフライ級王座決定戦のアンダーカードとして行われ
たFIジムの中村選手との一戦
松崎選手は2度のダウンを奪われて追い込まれた
結果的にはダウンを奪い返して、5回TKOで、中村選手を下したが、この試合での松崎選手
の2度のダウンを点検してみると
アップライトに構える松崎選手のみぞおちを狙うボディストレートが何度も決まり
ガードが下がったところに、中村選手の思い切りの良い右オーバーハンドで松崎選手は
ダウンを奪われている
この試合の塩野選手、ほとんど松崎選手のボディを打たなかった
ブロックが固く、ディフェンスもしっかりしていて、無理攻めをしてこない松崎選手を崩すに
は、もう少し上下の打ち分けを工夫すべき
第6試合 スーパーライト級8回戦 ○中村徳人(3-0判定)小森光幸●
日本スーパーライト級7位、相模原ヨネクラジムの中村(12勝3KO9敗)と、FIジムのノー
ランカー、小森(8勝4KO3敗1分け)の対戦
F1ジム初のランキング獲得を目指して、開始直後、ダッシュの小森
ワンツー、フック、アッパー 猛然とラッシュ
1回は、攻勢を評価し、小森のラウンドに
しかし、2回以降、中村は、冷静に対処
的確に、カウンターを決めて、ペースを握る
懸命に前に出る小森だが、体だけが前に出るのみで、パンチがついていかない
前に出ては、中村に合わされて、打ち込まれる展開
この流れのまま、ラウンドが進行
優位な中村だが、小森も打たれ強く、スタミナもあり、最後まで倒れず
勝敗は、判定にゆだねられ、79-74 79-75 80-75 3-0で中村の勝ち
塩野、小森と相次いで、討ち死に
やはり、ランカーの壁は厚い
アンダーカードは、6回戦1試合と4回戦4試合
第5試合 52キロ契約6回戦 ○小山田彰利(3-0判定)塙繁紀●
シャイアン山本ジムの小山田(5勝2KO6敗1分け)が、協栄カヌマジムの塙(5勝4敗1分け)
に、3-0の判定勝ち
( 59-56 59-56 59-57 )
小刻みに頭を振り、足を使って、軽快なボクシングのサウスポーの小山田
2回1分30秒過ぎ 左ストレートを決めて、ダウンを奪う
前半3回までは、小山田のペース
4回、小山田の流血をきっかけに、インファイト、乱打戦の展開に
4回、5回は、塙が頑張り、ほぼ互角
最終6回 小山田に疲れの色
この回は、塙が優位に
勝敗は、判定にゆだねられ、3-0(59-56 59-56 59-57)で小山田の勝ち
第4試合 スーパーライト級4回戦 ○武田浩佑(2回2分38秒KO)遠藤裕之●
「打ちまくって、熱い試合を魅せます」
パンフレットに書かれたメッセージの通り
協栄ジムの武田(2勝1敗1分け)が、国際ジムの遠藤(3勝1KO2敗1分け)を2回、KOに
1回から武田は、距離を詰めて、連打
特に左のボディアッパーは強烈
上下に散らす左のダブルも披露
2回2分20秒過ぎ 左フックで遠藤、ダウン
立ち上がる遠藤に、武田は落ち着いて、左右のボディを連打し、真ん中からアッパーも
突き上げる
再度のダウンで遠藤は立ち上がれず
武田が、頭を使った上下、内外の打ち分けで遠藤を攻め切って、プロ3勝目
第3試合 バンタム級4回戦 ○山下哲郎(2-0判定)黒須啓太●
津軽山龍ジムの山下(1勝1KO5敗)が、協栄ジムの黒須(1勝1KO)に、2-0の判定勝ち
( 38-38 38-37 38-37 )
「KOは狙わずに新人王戦に向けて、いい内容で勝ちたいです」
パンフレットに書かれた黒須選手のメッセージ
1回 2回と黒須は、迫力十分の切れのある右ストレートで優勢に
ところが、3回、得意の右の打ち終わりに、左フックを合わされて、黒須、ダウン
最終4回も、右の打ち終わりを、山下に狙われて、打ち込まれる
勝敗は判定にゆだねられ、2-0で、山下の勝ち
敗れてしまったものの黒須選手、素質は十分
右ストレートにはかなりの威力、パワーもスピードもあり、運動神経にも恵まれている
右の引きを早くして、打ち終わり、ガードを必ず上げておく
左にヘッドスリップしながら右を打つ
といった工夫をすれば、山下の左フックは防げていたと感じた
第2試合 65キロ契約4回戦 ○中村賢人(3-0判定)高桑和剛●
山神ジムの中村(1勝1KO)が、輪島スポーツジムの高桑(1勝1KO1敗)に、3-0の判定勝ち
( 38-37 39-37 39-37 )
1回終了間際 サウスポーの中村が右フックで、高桑からダウン
その後、高桑も粘るが、このダウンによるポイントがものを言って、中村が3-0の判定勝ち
第1試合 フェザー級4回戦 ○中村幸裕(2回31秒KO)大羽剛史●
ピュ-マ渡久地ジムの中村(1勝)が、セレスジムの大羽(1敗)に、2回TKO勝ち
中村が、踏み込みのよい右ストレートで、試合を優位に進め、2回右アッパーでKO勝ち
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